蜜月 2
「ほんと。SNSで投稿したらバズってそうだよね」
今日のランチがテーブルに届けられた。メインはカキフライらしい。
「ここはね、どれを注文してもハズレが無いのよ。今度彼と一緒に来るといいよ」
「悠さんと?」
ここ数日、一緒にいても空気が重くなりがちで。二人ともいつも通りを演じているけど、同じく二人とも不安の中にいることが手に取るようにわかっていた。一緒にいると苦しい。でも離れるのは嫌。離れたらもっと苦しい。出口の無い、真っ暗なトンネルの中に二人、身を寄せ合って怯えて生きている。でもそれって幸せなのだろうか?やはり私は身を引くべきでは?そんな考えにずっと支配されていた。
「美咲、彼がお母さんとの事で苦しむぐらいなら自分が身を引こうとか考えてるでしょ」
「…すごいね、すみれ」
見事言い当てられて、目を丸くしてしまう。
「このすみれ様の目を誤魔化せるとでも?」
「お見それしました」
カキフライにかぶりつく。カラッと揚がって美味しい。使っているのは米油だろうか。
「ずっと二人だけで考えてると悪い方向にしか行けないよ。今もしかして、彼との空気は重苦しかったり?」
「うん…お母さんの話題は避けてるんだけど。でもどうしても、お互い無理して笑ってる感じがあるの」
愛しい人の、しんどそうな作り笑いを見るのがこんなに辛いなんて、知らなかった。私が作り笑いをしていた時も、悠さんはこんな思いをしていたのだろうか。
「二人とも、休みは外に出るべきだよ。家の中でいちゃついててもいいけど、それは心配事が無い時にできる事であってさ」