蜜月 1
私はどうするのがいいのだろう?どうしたら、悠さんは救われるのだろうか?頭の中で、ずっとぐるぐると、答えの出ない問いに向き合っていた。愛しい彼と、離れるのは嫌だ。でも私がいる事によって、彼がお母さんに対して辛くなってしまうのは、私の本望ではない。
黒瀬のお父さん初め家族の方々は、私を表面上歓迎してくれた。これが鈴木先生が言うところの『表面上、上手くやっている』というものなのだろう。黒瀬家の方々だけだったら、それでクリアだったのに。お母さんに対して、私に出来る事ってやっぱり無いのだろうか…?
「だから、無いってば。彼に任せるしか方法は無いって」
「すみれさん…何て容赦無い…」
あれから一人でずっと考え込んでいた。やはり自分の身を引く事が一番悠さんの為になるのではないだろうか?という考えが脳の大半を占めてきていた。勘の良い彼はすぐに気付いた。俺から離れるな、離れないでくれ、と乞われ抱き締められる頻度が増えていた。このままでは二人して迷子になってしまう。気分転換も兼ねて、土曜日の今日はすみれとランチに来ていた。
すみれのかつての勤務先の近くには、有名な商店街がある。その中の居酒屋のランチが美味しいと、すみれに勧められて食べに来ていた。顔割れは気にならないの?と尋ねたことはあったが、すみれ本人は特に気にしていないらしい。
「前任校の校長がさ、商店街の観光客用の地図に5段階で成績付けてたのよ。夏休みの自由研究だって言って。その中でも、この居酒屋のランチは評価5を取ってたの」
「ミシュランみたいね。成績付きでその地図欲しいわ」