邂逅 8
「美咲、その言葉、後悔するなよ?」
激しい律動に、意識の全てを持っていかれそうになる。最奥の、一番敏感なところを突かれてわたしの意識は朦朧としていた。悠さんが達すると、もうわたしは立っていられなくなり、お風呂の淵に掴まってぐったりとしていた。
「美咲…?どこ行くの?」
真夜中、ふと目を覚ました私がベッドを抜けようと起き上がると、悠さんに手首を掴まれた。
「喉乾いたから、お水飲んできます」
ベッドを抜けることに不満げな顔を隠さない彼は「水飲んだら、早く戻れよ」と掠れた声で紡いだ。やっと最近、ベッドを一人で抜けることを許された。ついこないだまでキッチンまでついてきてたのだから、かなりの進歩だ。
キッチンでお水を飲んで部屋に戻る途中、悠さんのスマホが光っているのに気付く。着信表示は『和佳子』とある。産みのお母さんだ。彼は何も言わなかったけど、今でも夜中に電話をかけてきていたのか。
悠さんのスマホの前で立ち尽くしていた。
「美咲…?」いつの間にベッドから出てきたのか、私を腕の中に閉じ込めた。
「早くベッド戻ろう…?」
耳元で囁く声に甘えたくなる。
「悠さん…お母さんから、また着信があったみたい」
「ああ…放っといていいよ。それより早く戻ろう?」
悠さんはずっと何も言わなかったけど。やはりこのお母さんと向き合うことから逃げてはいけないのだと思う。すみれには『全て分かり合えるとは思わない方がいい』と忠告されていた。でも。向き合う努力はするべきではないだろうか…?