邂逅 3
もう一押しかな。
「ね、悠さん、ただの仕事だから。子どもたちも一緒だから、気にしないで?」
唇を彼の頬に、首筋に押しつける。右手を彼のそれに伸ばすと、少し硬くなっていた。そっと触れて刺激を与えると、噛み付くようなキスが降ってきた。
涼しくなってきたからか、ゴッホの池周辺は観光客が多い。第一駐車場にバスを停車することは出来なかったので、地元の人にしかわからない道で裏から周り、バスから降りた。一年生3人、2年生4人、引率者は鈴木先生と私で、計9人だ。山奥の観光地に黄色い帽子を被った小学生はやはり珍しいようで、観光客の視線を感じた。
「池の周りは人が多いから、まずは隣の神社に参拝に行こうか。結城先生、後ろお願いします」
先頭に鈴木先生、一番後ろに私、間に子どもたちという、一列で急な階段を登る。階段を登り切って見下ろすと、結構な高さであることに気づく。
「ニ礼二拍手一礼、ね。お金は持ってきていないけど、順番にやってみようか」
引率者の私達を含めても9人だからできることだ。これが1学級30〜40人だったら参拝すらさせてあげられない。私もちゃっかり最後に参拝した。
「鈴木せんせえ、この犬、子どもいるよ」
2年生のかんたくんが狛犬を見て探検メモに書き込む。子持ちの狛犬か。珍しいな。
「こっちの犬はボール持ってる」
かんたくんの双子の兄弟、そうたくんが狛犬の手に玉があることに気付く。同じくメモをしている。2年生のあきらちゃんは、まだ神社の鈴を鳴らしたくてしょうがないらしく、鈴木先生に阻止されている。2年生のゆきちゃんと一年生の3人はメモを書き終えて、日陰で水筒のお茶を飲んでいた。