覚悟 8
ごめんな、と呟く悠さんは、まだ私を閉じ込める腕の力を緩めなかった。
「俺…美咲を、誰にも取られたくないんだ。本当は、ずっとこの家に閉じ込めておきたいぐらい…」
「悠さん、それ、割とヤバめなこと言ってますけど」
「わかってるよ。だから実行してないだろ。ちゃんと我慢してんの、俺」
偉いでしょ?とドヤ顔で語ってますけど。いや実行したらヤバい人だから。その自覚はあるのだろうか?
「ううむ…独占欲がヤバめなのは間違いないかな」
ミリノヤのピザを食べる手を止めて、すみれは苦笑いで答えた。
「やっぱり?」
うっすら感じてはいたけれど。すみれの目から見ても、悠さんの独占欲は強いらしい。
「今日私と会うっていうのは、信じて貰えた?」
「それは大丈夫。昨日結構怒ったから。私が」
本気で怒らなかったら、私が泣かなかったら、今日も来させて貰えなかったかもしれない。悠さんは思ってた以上に、束縛をする人なのかもしれない。
「怒ったんだ。珍しいね、美咲が怒るの」
「そう?」
「追いかける恋愛をしている美咲しか、私は見たことなかったから。束縛されて怒ってるとか、初めて見たよ」
「そう、かなあ…?」
思い出し笑いをしているすみれとは、大学の4年間、毎日一緒にお昼ご飯を食べていた仲だ。お互いの大学以降の恋愛は、全て知られている。すみれは大学からずっと付き合っていた彼とは別れたと言っていた。美人のすみれがフリーでいること自体、私に言わせればだいぶ珍しい。