覚悟 4
「俺の事を知っていく度に、美咲が倒れたら、俺、耐えられない。そんなの、幸せなんかじゃないだろう?」
涙声で言葉を紡ぐ彼は、その言葉とは裏腹に私を包む腕に力を込めた。
「私、もっと強くなるから。腹、括りましたから」
だから泣かないで、と私も彼の背中に回した腕に力を込めた。
腕の力が緩んだ。顔を上げると、唇が優しく重なった。何度も重ねていると、噛み付くようなキスに変わった。
「待って、は、るかさん…今日は、ちょっと…」
「さっき倒れたばかりの美咲を抱こうとは思ってないよ。俺も、風呂入ってくるよ。眠たかったら、先に寝ててもいいよ」
白い歯を見せた彼は、私の頭を撫で、風呂場へと向かって行った。部屋に一人きりになった途端、睡魔に襲われる。悠さんを待っていたいのに、私の意識は少しずつ失われていった。
夜の闇が深くなった頃。ふと目を覚ますと、身動きが取れない。金縛りだろうか?私、疲れすぎたかな?でも首から上は動く。よく見ると、私はベッドの中で悠さんにきつく抱きしめられていた。今までも悠さんの抱き枕のように抱きしめられたまま眠っていたことはあったけど。金縛りと間違える程きつく抱きしめられたまま眠っていたのは初めてだ。悠さんの方を向きたいけど、これでは難しい。体勢を変えるのは諦めて、再び眠りについた。
カーテンの隙間から光が漏れている。朝になったのだろう。彼の腕の力は緩まる事なく、そのままだった。そろそろ寝返りを打ちたいな…。彼の腕から何とかしてすり抜けようと、ごそごそしていると、更に腕に力が込められた。
「美咲…?」
「悠さん…ちょっと、腕の力を緩めて欲しいんですけど」