対面 10
「えっ…沢山、ですね。時数とか、それでまわるんですか?」
私の担当教科の多さに美和さんは驚いたようだ。
「うちの学校、山奥で。全校で20人しかいないから、家庭科と音楽は2学年合同の複式なんです」
「だからか…。私、4年生の少人数指導やってます」
ずっとにこにこしてて、話しやすい人だな。
「あの、修学旅行で東京に来てたって事は、その中学校はどちらだったんですか?東京ではないですよね」
「S市って、わかります?」
「S市…お隣です。私、鷺山に住んでるので」
「えっ!私、S市の星ヶ丘中にいました」
「S市の星ヶ丘中…あの、安達先生ってわかります?安達友香先生。今同じ小学校なんです」
「えっ…黒髪ボブで、眼鏡掛けてます?」
「そうです」
「私、星中でご一緒してました!え、嬉しい!こっちで安達先生の話ができるなんて!ねぇ誠、美咲さん、安達先生知ってるって!」
ぱあっと表情が明るくなる。さっきの一ノ瀬さんとほぼ同じ表情。夫婦って顔が似てくるっていうけど、こういう事なのかな。
「え、マジか。そういえば黒瀬さんのいる柿山って、S市近かったもんな」
「美咲さん、安達先生と同じ小学校なんだって」
「そうなんすか。世間狭いな…」
「その小学校の近くに、俺の勤務してる研究所があるんだよ」
言いながら、膝の上にあった私の手に、悠さんは指を絡めてきた。
「じゃあ、2人の出会いは柿山で、ですか?」
一ノ瀬さんが目の前にあった肉料理を平らげると、追加注文をしていた。スラっとした見た目に反して、沢山食べる人らしい。