対面 8
ホテルを出て繁華街を歩く。少し歩くと、感じの良さそうなバルがあった。入ってみると、カウンターに案内された。
「ここ、来たことあるんですか?」
「柿山に行く前は、仲間達とよく飲み歩いてたんだよ。ここは、そのうちの一軒で、お勧めは肉料理」
メニューを眺めていると、背後から知らない男性に声を掛けられた。
「あれ?黒瀬さん?」
悠さんは振り返ると嬉しそうな顔をした。
「誠じゃないか!久しぶりだな。お前、結婚したって聞いたけど。奥さん置いて飲み歩いてるのかよ?」
「今日は奥さんも一緒ですって。可愛い妻放っておくわけないでしょ」
悠さんと同じぐらいの長身の男性。年齢は、私と同じぐらいだろうか?
「美咲、コイツ、俺の飲み仲間で一ノ瀬誠。仕事絡みで仲良くなったんだ。この子、もうすぐ俺の奥さんで、美咲」
「結城美咲です」
軽く礼をする。
「一ノ瀬です。黒瀬さん、久しぶりだし、一緒に飲みませんか?」
「えっ?お前奥さんと一緒だろ?」
「俺の奥さんも、黒瀬さんの奥さんも一緒に。どうです?」
「美咲…」
私に気を遣っているのかもしれないけど。一ノ瀬さんも、その奥さんも初対面だし。でも、悠さんもこの一ノ瀬さんも、すごく一緒に飲みたそうなのは表情でわかる。
「一ノ瀬さんの奥様が、良ければ…」
一ノ瀬さんの表情がぱあっと明るくなる。
「じゃあ俺、奥さんに聞いてきます!」
一ノ瀬さんはすぐに自分のテーブル席に戻って行った。
「黒瀬さん、嫁オッケー出ました!こっちのテーブルどうぞ」
私達は店員に席を移動する旨を伝えた。