対面 7
門が自動で開き、車が走り出した。走り出してすぐ、赤い外車とすれ違った。
「間一髪、だな…」
「え?」
その声に悠さんの顔を見ると難しい顔をしていた。
「今の赤い車。産みの母親の車だよ。俺が美咲を連れて実家に行っているのを家の誰かから聞いたんだな」
「え?そんなこと、あるの」
「あの家は、ある。黒瀬の母側についている使用人がほとんどだけど、情報が母親に漏れているということは、母親側の使用人もいるということだ。表面上は平和な家なんだけど、一歩中に入るとそこそこ魑魅魍魎なんだ。」
「涼しい顔して魑魅魍魎とか言わないでよ…。悠さんは慣れているのかもしれないけど」
「大丈夫。美咲は俺が守るから」
私の顔を見て微笑んでくれるのは嬉しいのだけど。赤信号で停車中だから良いのだけど。ただ、私には刺激いっぱいの、寧ろ刺激あり過ぎな実家訪問だったのは間違い無い。
その日は都内のホテルに宿泊することにしていた。鷺山〜東京間を日帰りで往復するのは、無理な距離なのだ。
部屋に荷物を置いて一息ついていた。
「晩飯、どうする?」
「どこか、食べに行きましょうか」
「俺はここで美咲を食べながらルームサービスでもいいんだけど」
窓から外の景色を見る私を後ろから包んで耳元で囁く。私はあんなに緊張していたのに。悠さんの色気は通常営業らしい。
「私、食べに行きたいです。せっかく東京に来たなら、少しぐらい歩きたいです」
「美咲がそう言うなら…。でも部屋に戻ったら、美咲も美味しく頂くからな」
不服そうな悠さんは、私の手を引いて部屋を出た。