対面 3
不機嫌そうに悠さんが言うと、そのおばあさまはようやく私の存在に気付いたようだった。
「まあ!こちらのお嬢さんが坊ちゃんの?可愛らしいお嬢さんだこと!私、ここに長年お仕えしております、トミ子と申します。ささ!皆様お待ちですよ!」
「なかなか来ないと思ったら。トミ子さん、悠が来たらすぐ案内するよう言ったでしょう?」
これまたお上品なマダムが。恐らく悠さんの育てのお母さまだろう。
「初めまして。結城美咲と申します」
「お待ちしてました。悠の母です。トミ子さん、話が長いわよ。さあ、行きましょう」
姿勢良くスラっとした、映画に出てきそうな素敵な方だ。悠さんのお母さまとトミ子さんの案内で、応接間へと入った。
立派な応接間に通された。社長の邸宅なのだから当然なんだけど、テレビとかでありそうな「社長の御宅訪問」みたいな番組で見たことあるような、あの、応接間だ。天井がシャンデリアの家に訪問するのは人生で2度目だ。1度目は水無瀬にいた頃に生徒の家庭訪問で通された応接間だった。その家も、やはりお父さんが社長だった。
「失礼します。初めまして。結城美咲と申します」
「こんにちは。そちら、お座りください」
応接間にあるソファは複数箇所座れる所があって。そちらって、どちらですか?って聞きたくなるぐらいなんだけど。困って悠さんの顔を見たら、先に彼が座ったのでその隣に座った。
「今日は、遠いところからありがとうね」
「こちらこそ、お時間作ってくださり、ありがとうございます」
悠さんの声を更に低くしたようなバリトンがよく響く。どこかで聞いた声かと思っていたら、居酒屋の大将と声がよく似ているのだった。