対面 2
「うん。言われたい」
「言わせたら、俺の実家に辿り着くまでにどっかのラブホでご休憩になるけど大丈夫?」
「えっ…ちょっ、何を」
「二時間程遅れるって連絡しとく?」
怪しげな笑みを浮かべた悠さんはスマホを取り出した。
「しなくていいです!悠さん、運転に集中してください!」
笑いながら運転に戻った彼に、私は完全に遊ばれている気がした。でもこのやり取りのおかげで、少し緊張が和らいだ、かもしれない。
それでも、彼の実家の目の前に車を停車した時には、また緊張感が襲って来た。緊張するな、という方が無理だろう。テレビでしか見たことの無い、高級住宅街。その中でも一際目を引く、大きなお屋敷。それが、悠さんの育った実家だった。田舎者の私には眩しすぎて、貧血起こして倒れそうだ。
「…俺。門の前に着いた」
悠さんがスマホで家の中の方と連絡しているようだ。自動で門が開き、車は敷地の中に入った。車が止まり、エンジンも止まった。ドアを開けると、よく手入れされた庭に向日葵が沢山咲いていた。何故だろう、向日葵が咲いているのを見るだけで、なんだか安心感が出てきた。なんとなく、いける気がしてきた。
何度も深呼吸を繰り返す私の肩を、悠さんが抱き寄せる。大きく息を吐く。よし!いざ!嫁入りの挨拶へ!
「ただいま」
「お邪魔、します…」
玄関に入った私達を、上品なマダム…というにはお歳を召した感じの、寧ろトメさんによく似た、おばあさまが出迎えてくれた。
「坊ちゃん!まあ!立派になられて…」
目を潤ませて悠さんとの再会を喜ぶおばあさま。そうか、悠さんは坊ちゃんと呼ばれていたのか…。
「30過ぎた男に坊ちゃんはやめてくれよ。嫁さんに引かれるだろ」