対面 1
「ふう…」
「美咲、その溜め息、何度目?」
運転する悠さんは苦笑いだ。今日は遂に、悠さんの実家に挨拶に行く日で。手土産は彼のお母さんの好物を事前にリサーチしていたから、きっと大丈夫。パステルカラーのワンピースに、髪型はハーフアップにした。毛先は巻いていない。わかりやすい「彼の実家への挨拶」スタイルだ。
「ガッチガチだな」
「は…は、るかさんだって、うちの実家行った時はガッチガチだったよ?」
「ガッチガチでも、俺はクリアできたからな」
「いや我が家と悠さんのおうちとは、緊張度は訳が違…」
「変わんないって。そんなに緊張するような家じゃ無いから大丈夫」
何言ってんのこの人は。庶民の家と社長の家を一緒にしないで頂きたい。
「あなたみたいな地味な子が付き合える子じゃない」悠さんの産みのお母さんの言葉は、棘のように、私をじわじわとずっと痛めつけていた。地味と言われても。派手に装うのは得意ではないし。人並みに華やかにするのは好きだけど、男ウケを狙ったような服は私には多分似合わない。悠さんは今の私を好きだと言ってくれている。だから、服の路線を変えることはしなかったのだけど、でもご実家となれば話は別で…。
「ねえ、悠さん」
「ん?」
「私、地味かなあ?」
「え、何で?そんなこと無いけど。誰かに言われた?」
「…悠さんの、お母さん」
「え?」
「前、マンションのエントランスで会ったときに」
「そっちの母親か。あの人が派手なだけで、美咲は地味じゃない。美咲の服は品があって、俺は好き」
「服だけ?」
「言わせたいの?運転中の俺に」