理由 13
そっと、愛しい人の胸の先端に手を触れた。
「…っ…!」
悠さんの顔が一瞬歪んだ。
「きもちいい、ですか…?」
その直後、熱く硬い彼が挿入ってきた。激しい律動に、頭がくらくらする。荒い息遣いと、喘ぎ声と卑猥な水音だけが聞こえる。自分の声なのに、喘ぎ声は違う誰かの声のように聞こえる。私の意識は、最早自分の体内には無いようだ。愛しい彼にしがみついて、ただ腰を振って喘ぐだけの生き物を、私の意識は冷静に見ていた。
何度も達して意識を手放しても尚、彼の律動が私の意識をこちらに呼び戻す。その硬さは変わることなく、それどころか更に硬度が増した。繋がっているそこで増した硬度に気付いた私は、また達してしまった。時折、悠さんが掻き回すような動きをする。慣れてきた刺激とはまた違ったそれに、私は飜弄された。律動と同時に揉みしだかれ、先端を刺激され、わたしはとっくにおかしくなっていた。ずっと攻撃だけを受けていた私は無意識に彼の胸の先端へと手を伸ばし、力加減を調整してそっと触れていた。
「美咲、もう…」
「うん、全部、ください…」
付けるべきものを装着しているので彼の精は貰えない。実際に結婚するまでの我慢だ。更に硬度を増した彼は律動を速めた。自分でコントロール出来ないところまで私の意識は飛びかけ、彼が達したのと恐らく同時に、意識を手放した。
目を覚ますと、夜の闇は深くなっていた。布団を被ることなく、私たちはベッドの上で一糸纏わぬ姿でただ絡み合っていたことに今頃になって気付いた。愛しい彼は規則正しく胸を上下させている。喉の渇きを感じた。情事の最中、沢山喘ぎ声を出したのだろう。ふと頬に触れる。化粧がきっと崩れている。