理由 7
もう言うタイミングか。
「ええと、私、悠さんと結婚することに…」
「ええっ…!」
驚いた白井先生は、大して驚くことなくにこにこしている安達先生カップルの顔を見た。
「なんだ、知らなかったの私だけですか?」
白井先生は唇を尖らせて不服そうな顔をした。
「私、勝雄くんから聞いてたの。でも、ご本人差し置いて私が言う訳にいかないし…」
「そっかあ…でも素敵!おめでとうございます!」
満面の笑みで祝福してくれる白井先生。ずっとにこにこしている安達先生カップル。この人達は私達を純粋に祝福してくれている。その事実が、とても嬉しかった。
「あの、彼氏さん…のお名前って…悠さんってお呼びするのもアレなんで、名字教えてもらえます?」
白井先生のこういう配慮は素敵だと思う。
「黒瀬、です。…かっちゃん、エビフライ、美味い」
勝雄さんや私といる時とは違って、悠さんの口数が少ない。悠さんのよそ行きの顔ってなんだか貴重。
「ええと、黒瀬さん。結城先生のどこに惚れたんですか?」
予想していなかった質問なのか、ゴホッと喉を詰まらせている。慌てて背中をさすって水を差し出す。
「こういう、ところじゃないかな?ねえ悠?」
勝雄さんが意味ありげに悠に問う。
「え?」
まだ胸を拳で軽く叩いている悠さんが顔を上げた。
「美咲ちゃん、尽くしてくれてるもんな」
「…まあな」
そっぽを向いた彼は、もう通常の呼吸に戻ったようだ。
「尽くしてくれるのは嬉しいけど、結婚する理由はそこじゃない」