理由 2
「今日の日替わりは…」
壁に掛かっている小さな黒板に視線を向ける。
「メインはエビフライだよ」
ここはお蕎麦がよくランチに出ると悠さんに聞いていたのだけど。エビフライとは珍しい。
私と白井先生の口はお蕎麦を食べる口になっていたので日替わりを避けて天蕎麦定食にした。安達先生だけが日替わりを注文した。
安達先生を追及したいけど、トメさん達の前で話すわけにはいかない。どうしようかな…?
「今日はお友達と一緒だったのね。ねぇ美咲ちゃん。店長、彼女が出来たみたいよ今日はその話で持ち切りだったの」
トメさんが楽しそうに話す。安達先生の表情が硬くなった。
「店長、長らく彼女いなかったからどんな人だろうって話してたの。美咲ちゃん、気にならない?」
トメさんのアイスコーヒーはあと半分残っている。まだ10分ぐらいはここにいらっしゃるのだろう。
「そうですね…私、そんなに複数回、店長とお話したこと無いのでちょっと想像つかないですね」
言いつつ、どうしても安達先生に目が行ってしまう。
「もう、店長が幸せそうでね。表情が全然違うの。いつかお会いしてみたいわねぇ」
…多分、目の前にいますけどね。
上品なマダム、トメさんのアイスコーヒーは残り少し。