東風 7
「距離か。うーん、田舎故、かなあ…」
髭の店主が考えながら答える。
「田舎って保守的な面がある。よそ者に厳しいイメージあるじゃん。僕もここに店を構えたときは正直不安に思ったよ。歓迎されるかなって。場所によって傾向は違うと思うんだけど、あの人達は来るもの拒まない人達だった。だから何とかやって来れた。人見知りな方もいらっしゃるけど、それは田舎でなくても同じだろうし。…あの人達との会話、楽しかったでしょ?」
おじい・おばあズとの会話を思い返す。
「楽しかった、かもです…」
全員ずっとにこにこしてくれていたのが安心した。
「俺、前は水無瀬市に住んでたんだけど。そこにいた頃より人付き合いは楽になった気がするよ」
「え、私も水無瀬にいました」
「え?」
店主が目を丸くする。
「柿山にはいつから?」
「柿山には仕事で通うんです。住んでる所は鷺山のもう少し街中です」
不意にドアの鈴がカランコロンと鳴った。
「かっちゃん、まだやってる?」
背の高い男性が大きな声で入ってきた。
「ん、あれ…?女の子?珍しいな…」
「悠、遅かったな」
「団体さんが一気にお買い上げでさ。ランチまだある?」
「お前の分は取ってあるよ。作ってくるわ」
店主は言うなり、店の奥に消えていった。
悠と呼ばれた男性は囲炉裏の、私の真向かいの席にどかっと座った。そのままスマホを弄り出す。
窓側の席が空いていた。そっちに座ればいいのに。