静黙 6
家庭科室の隅に大量の牛乳パックがある。大きなゴミ袋に入っていて、その袋3つ分だ。
初めて柿山小に打ち合わせに来たその日、鈴木先生に案内されて家庭科室に入った。その時も雑多な印象はあったけど、5・6年の調理実習をした時にはその牛乳パックはだいぶ目障りだった。
「家庭科室の牛乳パック…あれ、片付けていいですよね?」
終業式後の飲み会での出来事以来、私と鈴木先生は以前と変わらない接し方で仕事をしていた。そもそも隣の席で仕事をしているのだ。気まずくなったら仕事どころではない。
「ああ、牛乳パックね…。ずっと置きっぱなしでごめんね。あれは去年までいた先生に生活科で使ってくれって言われて貰ったやつなんだ」
「…にしても。随分と大量ですね?」
「この夏休み中に片付けようとは思ってたんだ。そのうち、やっとくよ」
「…先生のそのうちって、いつぐらいです?」
「そのうち、はそのうち…」
鈴木先生の机の上は片付けが苦手である事を物語っている。私の机との境界線に鈴木先生の私物が侵入していることはしょっちゅうだ。
「私、今日あの牛乳パック、片付けようと思ってました。というわけで、私行ってきますね」
「え、俺もやるよ。そもそも俺が片付けないといけないやつだし」