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静黙 3
「うなぎ…」
差し出されたのはうなぎの押し寿司だった。
「タレはまだ、試作段階だが。食べてみてくれ」
店の照明に反射した鰻の押し寿司はきらきらと輝いて見えた。悠さんと2人して箸を伸ばす。
「美味しい」
「美味しいですね」
彼と顔を見合わせて押し寿司を味わう。
「結婚、おめでとう」
祝福の言葉をそっと告げられた。物静かな大将に祝福され、喜びもひとしおだった。
彼の予告通り、帰ってからはお風呂でも寝室でも愛された。日毎に濃厚になっているのは気のせいだろうか…?
「かっちゃんに結婚すること報告したらさ、違う報告を受けたよ」
「勝雄さん、何か幸せなことが?」
「彼女が出来たらしい」
「え!良かったじゃないですか」
土日が明け、また1週間が始まった。悠さんの勤務は変わらないけど、夏休み期間中の私は子どもたちが登校しない分、朝はゆっくりになる。勤務時間に間に合えばセーフなのだ。
いつもはパンとコーヒーの朝食。本当はご飯と味噌汁の和朝食にしたかった。朝、余裕のある今だけはと少し気合いを入れて用意していた。