東風 6
差し障りの無い範囲でおじい・おばあサマの質問に答え、控えめに会話に参加していると店主がランチを持ってきた。この店のスタッフは店主だけなのだろうか?
うーん…。お蕎麦と天ぷらは良いのだけど。小さく添えられたデザートはミニフルーツサンドというこのギャップ。やはり何が一押しなのかがよくわからない。
でもどれも美味しい。よくわかんない店ではあるけど、また来ても良いかもしれない。
おじい・おばあサマ方は私が半分食べ終えたあたりでセットのコーヒーを飲み終わって席を立った。
「じゃあね、美咲ちゃん。またご一緒しましょ」
貴婦人おばあサマ・トメさんが私に声をかけていった。「はい、また」と答えてしまうぐらいには何故か仲良くなってしまった。
囲炉裏の食器を片付けると店主がコーヒーを載せた盆を持って囲炉裏の、私の向かい側に座った。
「色々距離近くてびっくりしたでしょう。でも良い人達だから仲良くしてやってください」
店主はふわりと笑うと私にもコーヒーを勧めた。
「セットのコーヒーです。どうぞ」
「どうも…。いつも、こういう感じですか?」
「こういう感じ、とは?」
髭の店主が不思議そうな顔をする。
「客同士の距離が近いというか…」