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白南風 9
ベッドに入って横になる。お風呂場で何度も抱き合ったから今日はこのまま寝かせてもらえそうだ。
悠さんは腕枕をしてくれるけど、私は腕よりも胸筋の方がよく眠れる。胸筋に頭を乗せて、身体をくっつけると、腕に包まれた。うっすらと眠気がやって来る。
「悠さん」
眠気に支配されつつ、言葉に出す。
「私も、悠さんを支えたいです」
「…美咲?」
「悠さんが、お母さんのことでしんどい思いをしてるなら…。私、そのしんどさを軽くしたいんです」
顔を上げた。彼の瞳が揺れていた。
「私、大したこと出来ないかもしれないけど…それでも、私、悠さんの…救いに、なりたい…」
言いたいことを最後まで言えずに、私は睡魔に負けてしまった。薄れゆく意識の中、腕に力が込められたのを感じた。
「貴方、悠の何?」
仕事を終えてマンションに着いてエントランスに入るところだった。
お年を召した黒髪ロングの、可愛らしい顔立ちの女性が明らかに敵意を灯した目で私を睨みつけた。