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白南風 8
お風呂の後、スキンケアを終えてリビングに戻った。悠さんのスマホが鳴っている。
「悠さん、スマホが…」
「放っといていいよ。たぶんまた母親」
ぶっきらぼうに答え、缶ビールを片手に私の隣に座った。
「っと…美咲はもうビールはいいか」
缶ビールを手に取ろうとしたところで引っ込められた。
「お風呂上がりは別です」
真顔で答え、缶ビールを無事受け取る。
「飲み過ぎるなよ…ってもう十分飲み過ぎか」
「今日ぐらいいいでしょ?」
「毎日飲んでんだから、たまには控えたら?」
「私がお酒控える日は悠さんもお酒控える日です」
「それは困るな」
ふわりと笑って、缶ビールのプルタブを同時に開けた。
「…お母さん、今も連絡があるんですか?」
「まあな」
「電話、出なくてよかったんですか」
「大した話じゃないからいいんだよ」
それ以上、踏み込むのは良くない気がした。悠さん自身も踏み込んで欲しくなさそうな気がして。
お母さんのことについて打ち明けてくれたのは嬉しい。そこから先の、彼の重たい荷物をどうしたら一緒に背負えるのだろうか。焦ってはいけない。
悠さんの為に、私は何が出来るんだろう?