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白南風 4
「結城先生いた!…あれ?鈴木先生も」
白井先生が宴会場の方向から顔を出した。
「もうデザート来てますよ。シャーベット、溶けちゃいますよ?」
「今行きます」
掴まれた手首は、白井先生の登場と同時に解放されていた。
「行きましょう、鈴木先生」
「あ、ああ…」
腰を浮かした鈴木先生の方は見ないで足早に宴会場に戻った。
宴会が終わり、ホテルのエントランスまで降りて来た。各自お迎えか代行をお願いしているらしく、駐車場の見える場所に移動していた。
もうすぐ宴会が終わる旨を悠さんにメッセージで伝えていた。駐車場に入る悠さんの車が遠目に見えた。
安達先生は代行、白井先生はお母さんがお迎えに来ていた。悠さんの車に向かおうとする私の手首が、不意に掴まれた。
掴んだ主は、鈴木先生だった。
何か言いたげな表情をしている。でも、何も言わない。私は私で、鈴木先生に手首を掴まれている現場を悠さんに見られたくない。
「…離してください」