白南風 3
宴会を抜けてお手洗いに行った帰り。廊下のソファでスマホを弄る鈴木先生に遭遇した。
「酔いは…覚めました?」
「まだちょっと酔ってるかな。結城先生、結構飲んでたけど、酒強いんだな」
「そうでもないです。お酒の失敗はちょいちょいあるので気を付けないといけないんですけど。今日は久しぶりだからつい飲んじゃいました」
笑って言うと「ここ、座る?」とソファの隣を勧められた。
そこ、座ったらちょっと近いな…とは思ったけど。空気が悪くなるよりは、と少しでも距離を取って座る。
「結城先生、彼氏、いるの?」
「…はい、います」
「仲、良いの?」
「え?」
「その人じゃないと、駄目か?」
私が思っていたより鈴木先生の目が大きかったことに気付いてしまう程、強い視線を感じた。
「駄目…なんだと思います。彼じゃ、ないと」
鈴木先生は確か婚約中だ。この夏の間に結婚式を挙げると聞いている。
「鈴木先生、酔ってますね。私、お先に戻ります」
そそくさと立ち上がると、手首を掴まれた。悠さんじゃない異性の体温に戸惑ってしまう。
「あの…」
強く掴まれて、動けない。強い視線に捕らえられた私は、どう切り抜けたら良いのだろうか?