暁天 8
カランコロンと大きな鈴の音が頭上で鳴った。そうだ、ここのドアには大きな鈴があったんだっけ。
店内を見渡すとテーブル席が1つ空いていた。
「いらっしゃいませ。あ、美咲ちゃん、久しぶりだね」
「こんにちは。テーブル席、いいですか?」
「もうすぐ悠来ると思うけど。テーブル席でいいの?」
「今日はまだ午後から仕事があるので…。そこのテーブル席で」
「3名様でいいかな?」
「はい。お願いします」
席に着いてメニュー表を3人で見る。
「結城先生、ここの店員さんと知り合い?」
安達先生が氷の入ったお冷をぐびぐび飲んだ。
「ん…さっきのは店長さん。前に来た時に仲良くなったの」
「結城先生?もうすぐどなたかいらっしゃるみたいですけど…?」
白井先生は勝雄さんの言葉を聞き流してくれなかったようだ。悠さんと一緒に暮らしていることは公表していない。住所の変更を小川さんに伝えたぐらいだ。期待に満ちた視線が刺さる。
「それより注文決めないと。1時間で戻るつもりなんだし。……私、今日のランチかな」
「結城先生は今日のランチか…。白井先生、どうする?」
「私は天蕎麦で」
白井先生は天麩羅とお蕎麦が好きらしく、初めてのお店で天麩羅とお蕎麦を見つけると必ず注文するそうだ。
「みんな早いな…私も、今日のランチかな」
安達先生も自分のメニューを決めると勝雄さんに合図をした。