暁天 5
何を言っても悠さんに言いくるめられてしまう。
私達のこの関係性はずっとこうなのかもしれない。でも、嫌じゃない。寧ろ嬉しいと感じる私はMっ気があるのだろうか。
「……もう、わかりました。悠さん、私とルームシェアしてくれますか?」
勿論、とまた腕の力が込められた。
「ただ私、引っ越すならキーボードを買おうと思ってたんですけど。置いてもいいですか?」
「キーボード?」
「音楽の伴奏の練習を、叔母さんの家にいた頃は叔母さんのピアノでしていたので…。ヘッドホン付ければ音は漏れないので、出来れば置かせて頂きたいんです」
ルームシェアだと言うなら、ここは悠さんの家でもあるけど、私の家にもなる。今までは遠慮して置いてなかったけど、私の仕事に必要な物も置けないと困ってしまう。
「物置にしてる部屋、美咲の私物部屋にすればいい。物置といっても、大して物置いてないしな」
やっと腕から解放された。手を引かれて物置部屋と聞いていた部屋に案内される。物置部屋と聞いていたから入ったことが無かった。
ドアを開けて中に入る。部屋の隅に衣装ケースが2つだけある。他には物は無く、ここなら私の私物が増えても問題無さそうだった。
「ここ、使ってもいいんですか?」
「いいよ。でもあんまりここに閉じこもるとリビングに強制連行するから覚悟してな」