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暁天 4
「それ、今と全く変わらない…」
彼は私の言葉を遮り、早口で捲し立てる。
「美咲がこの家出てったら俺の薬品開発が進まないだろうな。ああ、今まで順調に進んでたのに頓挫したら、助かる命が助からないだろうな」
「え…」
突拍子も無い話に戸惑う私を横目に、悠さんは不敵な笑みを浮かべた。
「だから、美咲はこの家にいないといけないんだ。助かるはずの命を助ける為。美咲がこの家にいてくれれば、俺は薬品開発を引き続き頑張れる」
「はあ…」
呆気に取られる私をよそに、悠さんはどんどん話を続ける。
「というわけで、美咲はここで俺とルームシェアね。これで美咲は自立した生活も人助けも同時に出来るんだ。中々良い話じゃないか?」
彼の話が強引過ぎて。
強引も、過ぎると何だか笑いが込み上げてくるのは何故だろうか。
堪えきれず笑みを零すと、触れるだけのキスをくれた。
「美咲。ここにいてくれるね?」
「……強引」
上目遣いで睨む私を他所に、彼は続けた。
「そんな事無いと思うけど?美咲が俺との暮らしを続けることが世の為人の為になってだなあ」