暁天 3
「悠さん、それ、プロポーズみたいですよ」
込み上げる涙を堪えて笑顔を作る。どうしても鼻声になってしまうから、泣きそうなのはきっと彼に気付かれてしまう。
「プロポーズだと、思ってくれていいよ。今の俺は、美咲がいないとダメなんだよ。美咲がいない生活になんて、戻れる気がまるでしない」
乞うような彼の目に捕われて、首を縦に振りたくなってしまう。
「でも…悠さんに、ただ養われてるみたいな、甘えてるだけの生活は嫌なんです。私、水無瀬では実家暮らしだったし、こっちでも美佳子叔母さんの家で居候だったし。今も悠さんに甘やかされて…私はちゃんと、自分の足で立てるって証明したいんです」
「だったら。せめて、ここから近い所に住んでくれよ。そうだな。この部屋の隣、空き部屋だから不動産屋に問い合わせてみるか?」
「悠さん、ここ明らかに家賃高いですよね…?」
駅近、オートロック、高層階。というより、最上階の築浅のマンション。私の予算は大幅に超えてそうだ。
加えて駐車場代も考えると、だいぶ厳しい。
「家賃が高いと困る?じゃあ、ここでルームシェアするか?」
「ここで?悠さんのおうちで、ですか?」
「家賃を俺に払う代わりに食費は美咲が払ってくれればいい。外食するときは俺が払う。で、光熱費と水道代は折半。駐車場代も今も美咲が自分で払ってるからそれはそのまま。これでどう?」
「それだと悠さんが払う分が多いですけど…」
「ご飯を美咲が作ってくれればいいじゃん。食事を作るっていう、家事という名の労働でフォローしてると思えばいい」
それは、どう考えても今と全く変わらないような…?