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疼き 4
トーストに齧り付く彼の表情を盗み見た。いつもと変わらない。昨夜、彼から告げられた衝撃的な内容と縋るような目。その後に続いた情事は急くようなものだった。
「悠さん」
「ん?」顔を上げた彼の表情もいつもと変わらない。
「あの、昨日の話…」
「美咲のご飯、今日も美味しいな」
その笑顔はいつもとは違う。私はその、作られた、硬い笑顔を見たいのではない。
「私、悠さんが好きです」
彼の動きが止まった。私の顔を凝視している。私も彼の眼を真っ直ぐに見つめ返した。
「好きだから…その、悠さんが何か…重たいものを背負っているなら、私も一緒に背負いたいんです。それが難しいならせめて…共有したいんです。少しでも、貴方のしんどさを、減らせたらって…そう、思うんです」
息を大きく吐いた彼の表情は、さっきよりも少し和らいだ気がする。
「そうだな…何から、話そうかな…」
コーヒーに口をつけ、暫く思案した彼は、やっぱり作った笑顔で私に告げた。
「朝ご飯食べた後でもいい?あんまり爽やかな話ではないんだ」