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疼き 3
目が覚めた時には陽は高く登っていた。今日が土曜日で良かったと思う。規則正しい寝息を繰り返す彼の腕の中にまだ閉じ込められていたいけど、そろそろ動かないと。
そっと腕を外す。ベッドから降りて麻のワンピースに腕を通した。
ベーコンを焼いて目玉焼きが完成した頃、悠さんがキッチンに姿を現した。
「美咲…」
「おはようございます、悠さん」
「いつの間にベッドから出てたんだよ」
コンロの火を止める私を後ろから腕で包む彼は不機嫌極まり無い。
「今日は一日中ずっとベッドにいようと思ってたのに」
「悠さん。健康な男女は食べたり動いたりするものですよ?」
「美咲、シラフだと正論言うよな」
「それはどういう?」
「何でもない。パン、焼く?」
私の身体を解放した彼は食パンを手にオーブントースターを開けた。
「お願いします。悠さん、1枚でいいですか?」
「ああ。美咲のも一緒に2枚入れるよ」
コーヒーメーカーに粉状のコーヒーをセットする。
この香りがあるだけで、新しい朝になった気がする。