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22 新しい仲間

『キャロ様、どうかボクたちレモンキーを配下に加えてはいただけないでしょうか』


 ずらりと並んだお猿の魔族……レモンキーたちは、キャロに向かって跪き、忠誠の意を示す。


 ……ていうか何だ、キャロ様って。

 やだ、知らないうちにどんどん出世していくんですけどこの子……。


『もちろん、ジュリア姫様にも忠誠を。身も心も捧げる心算でございます』

「ええぇ……」


 あの瘴気の塊の一件をキャロが精霊魔法(本人がそう呼んでいた)で片づけた後。

 ここまで来ておいて何もしないというのも締まらないので、私が後処理としてこの森に漂っていた瘴気を浄化したのだ。


 ……そう、私の浄化と言えばもちろんヨダレだ。


 最初は『森を穢す気か』と本気でレモンキーたちに殺されるかと思ったけど、キャロの制止もあって無事に浄化することに成功。

 結果、私に対してまで尊敬の目を向けられるようになってしまったというわけなのだ。



『いいんじゃねぇのか? 姫も魔境での仲間が増えるに越したことはねぇんだろうし』

「俺もそう思う。これからも魔境で暮らすのであれば、魔族の味方が居るのは非常に心強い」

「まぁ、ねぇ……それもそうなんでしょうけれど……」


 今の私は罪人が贖罪している最中みたいなものなのだ。

 軍に頼れないという現状、私の身を守ってくれる存在が多いのは有り難いことなんだけど……。



「取り敢えず、リモネーの木は多少貰って行って良いのよね?」

『はい、もちろんです。ジュリア姫様のお陰で、リモネーの種からたくさんの新木が生えそろいましたので』

「初めてジュリアの奇跡を見たけど、あれは凄かったよ……」

「やめてクロード。ヨダレで植物を生やすのを奇跡っていうのだけはやめて……」


 もしかしたら、と思い付いただけだったんだけど。

 リモネーの木に生っていた種を少し分けてもらって、浄化した土に植えてみたのだ。


 そうしたら見事にワサワサと芽吹いた。

 みんなでビックリしている間にも成長を続け、レモンキーたちが狂喜乱舞するほどのリモネー樹林となってしまった。


 そう、つまりはアレをクロードに見せたのだ。

 私がキャロを生やしたように、リモネーの種を自分のヨダレで成長させるあの(さま)を。


 あ~、やってしまった。

 後から乙女として致命的だったと気付いたんだけど、もう遅い。


 王都の教会で王子を救った時は全然恥ずかしくなかったのに、何故か今の私の顔は真っ赤っかだ。

 いっそ私が浄化した土の中に埋まりたい。



 と、とにもかくにも。

 これで建材として欲しかったリモネーの木が手に入ると喜ぼう。

 それにこれからもレモンキーたちから定期的に譲ってもらえることになったんだから、材木に関しては万事解決だ。


「そういえば、キミの名前は?」

『ボクの……?』

「そう。呼ぶときに困るでしょ? 『長』って呼んで、私が『姫』って呼ばれるのも何だか変だし」

『たしかに……』


 どうやら一族の中では『長』と呼ばれていただけで、特に名前は無いらしい。


『どうせなら姫が名付けてやったらどうだ?』

「えっ、私が?」

『あ、良いですね!! 是非、お願いします!!』

「ええっ? え~、いいけど……うーん、何がいいかな」


 私はレモンキーに生っていた実を食べながら、思考を巡らせる。

 そう、このリモネーの木の実はフルーツとして食べられるのだ。

 私たち人間でも害はないし、むしろ甘酸っぱくて美味しい。

 この果実も彼らから分けてもらえるので、これも食堂で出そうと思っている。


「んー、そうね。じゃあ『フライス』にするわ。この果実みたいに爽やかって意味の言葉なんだけど」

『フライス……このリモネーと共にある存在として相応しい名ですね。不肖フライス。この名を有り難く、拝領いたします』

「うん、あんまり堅苦しく無くていいから。これからよろしくね、フライス」


 あんまり畏まられても、私としてはやりづらいしね。


「なんだか、賑やかになってきたねジュリア」

「うふふ。そうね、まだここにきたばっかりなのに。でも凄く楽しいわ」


 クロードと二人でニッコリと笑い合う。

 キャロも私たちを微笑ましそうに見上げていた。


 キッカケは何にせよ、こうして私は頼りがいのある仲間を手に入れることができた。

 いや、仲間と言うより家族が増えたってカンジなのかな。


 これまで家族らしい家族はニューヒン聖女長しかいなかった私にとって、こうやって一緒に居てくれる人が増えていくのが……そう、堪らなく嬉しかった。









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