表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/23

17 気付いた元聖女


 教会を修繕するための、木材が欲しい!


 ということで、私たちは瘴気の森へ採りに行くことになった。出来る限りの準備を終え、さっそく村の入り口へ向かう。


「あ、いたいた! おーい、デークさん!!」


 デークさんはもう準備万端で待っていた。

 見た目は草臥(くたび)れたおっちゃんだけど、意外にも仕事が早いわね。

 ちゃんと装備一式と木材を運ぶ用の荷車を用意して、私たちを迎えてくれた。



「……こりゃあすげぇな」


 開口一番、彼は私()()を見てそう告げた。

 ふふふ、そうでしょうともそうでしょうとも。


「どうです? ちょっと強そうじゃないですか?」

「いやいや、ちょっとじゃねぇよ。これはもはや、一種の軍勢なんじゃねぇか?」


 若干引いた表情で、私の背後を見つめているデークさん。そこには大勢のマンドラゴラたちがひしめいている。


 うーん、やっぱり調子に乗って増やし過ぎたかしら?


「さすがにこれはやり過ぎじゃねぇのか? 軽く五十体ぐらいは居るだろコレ」

「おっ、凄いですね! ピッタシ五十体です! あ、違うな。私を入れて五十一、ですね!!」

「ははっ、はははは……やっぱこの子の頭の中身ってやべぇな」


 む、失礼な。

 もっと増やしたかったんだけど、自重してこの数で止めたんですよ?


 ……まぁ実際は途中で私の唾液が枯れてしまって、これ以上は無理だっただけなんだけど。



『たとえドラゴンが来たって、姫は俺たちマンドラゴラーズが守り切ってやるぜ!!』

『キャロキャロキャロ!!』


 おお~、頼もしい!

 総勢五十の軍勢が、村の門で高笑いを上げている。


「あ、あははは……」


 一方、その主である私は、余裕ぶってヘラヘラと笑う。こんな態度だけど、実際は心の中で冷や汗が滝のように出まくっていた。いや、傍目(はため)から見たら、これって相当ヤバイ絵面なんだもの。どう考えたって、モンスターが村を襲いに来たようにしか見えない。



 伝説の精霊マンドラゴラを生やしたり、傭兵を集めて大宴会を始めたり。

 この村に来てから問題行動が多すぎて、そろそろ本物の軍に目を付けられていそうで怖い。



「……なぁ、俺が来る必要は無かったんじゃないか?」

「そういえば何故ここにクロードが? 今日は他の皆と、魔族領へモンスター狩りに行くのかと思っていたわ」


 怒られたらどう謝ろうか考えている私に、そんな不満げな声が掛かる。

 そう、私たちを待っていたのはデークさんだけじゃなかった。呼んでいないはずのクロードが、ちょっとだけ不満げな顔で立っていたのだ。



「ジュリアがあの瘴気の森に向かうって聞いたからこっちに来たんだよ。俺ならある程度瘴気にも耐性があるし、デークさんが切った木材を運ぶんなら男手が多い方が良いって言うからさ」


 まさかこんな大勢のマンドラゴラを引き連れてくるとは思わなかったけどな、と引き攣り笑いを浮かべているクロード。


 どうやらデークさんが私一人じゃ危ないと思って、彼に声を掛けてくれたっぽい。さっきから「どうだ、気が利くだろ」とウインクを私に飛ばしている。


 あのドヤ顔がムカつくのは兎も角、デークさんの心遣いには感謝だ。


 確かにクロードが居てくれたら私もかなり心強い。彼の強さはこの村へ来るときに、この目でしっかりと見ているしね。


 あとは森の中の歩き方なんて私には分からないから、ついでにそれも教えてもらえると助かるかな。



「えぇ、貴方が来てくれるなら嬉しいわ! とっても頼りになるし!!」

「……そ、そうか。なら仕方ないな、ついていくよ」


 不満げな顔から、少し頬を染めてそっぽを向くクロード。


『おうおう、クロードの兄ちゃん。顔が赤いぜ? どうした、熱でもあるのか? んっんっ?』

「いいなぁ、若いって。俺にもそんな時代があったぜ、うん」

「う、うるさいな! ほらもう、さっさと行こうぜ!!」


 ふふふ。照れちゃってまぁ。

 デークさん含め、総勢五十二人がニヤニヤと前を行くクロードの背中を見つめる。


 クロードはずっと魔境で過ごしているから、私みたいな女でも褒められると恥ずかしいんだろうな。



 ……ははぁ。

 顔は良いから、モテるかと思ったけど。この様子だと、さては彼女も居ないなぁ?


 まぁ、それは仕方が無いか。街や王都で騎士でもやっていればモテていたかもしれないけど、魔境じゃあ女の子は居ないもの。



「何を考えているか、何となく分かるが……クロードは娼館ではモテるぜ? ジュリアの姉ちゃんもアイツを狙うなら、ちゃんと逃さねぇように気ぃ付けろよ?」

「しょっ、娼館っ……!? って、どうして私が! そんなんじゃないですから私!!」


 まったく、何てことを言うのよ!!

 私が恋愛? ないない!! そんなの、今まで考えたことも無かったわよ。


 孤児だし、仕事も無ければちゃんとした家も無い。あるのは、あの変なヨダレ体質だけ。

 こんな女に恋愛なんて、縁が無いにもほどがあるわよ。



 確かにクロードは良い奴だ。でもそういうのじゃないの。第一、まだ知り合ったばっかりだし。


 そもそも恋愛とか、教会の規律で禁止されて……



「ん? そういえば私、もう破門されているのよね」


 教会はここへ来る前に綺麗サッパリ縁が切れてしまっている……ハズだ。



 あれ? もしかして恋愛……できちゃうの?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ