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16 頼れるマンドラゴラーズ

「えーっと……その伐採って私が行く必要があるんですか?」


 私の嫌そうな感情を隠そうともしない質問に、デークさんは向かいの席でマンドラジュースのお代わりを飲みながら「そうだ」と頷きを返した。

 どうやら戦う術の無いはずの私が、そこへ行かなくてはならない理由が何かあるようだ。


「面倒なことにこの辺で木材が採れる場所っつったら、魔境にしかねぇんだ。なのにその森がよう。どういうわけか、最近になって瘴気が濃くなってきちまったんだ。あまりにも濃すぎて、俺たち普通の傭兵じゃ近付けねぇ」

「つまり、それって……」

「――あぁ。瘴気を浄化できる人間じゃねぇと、たちまち動けなくなる」



 うーん、まさかそんな理由があったとは。

 それじゃあ聖女しか森に入れないわけだわ。


 でも木が手に入らないって相当不便よね。

 建材は石を使うにしても、薪とか加工品は代用する物が無いし。


「この村ができたのは十年も前なんだがな。その時は軍が人間領から持って来ていたし、必要になれば俺たちが取りに行ってた。だが最近はそれも出来なくてよぉ。正直言って今の状態はかなり困ってるんだ」


 あー、なるほどね。

 昔はそこまで影響が無かったから普通に取りに行けていたと。


 それじゃあ今はどうしているんだろう?


 気になったのでついでに聞いてみたら、傭兵たちはどうやら軍に高いお金を払って入手しているらしい。

 軍は定期的に近隣の村や王都と行き来があるので、そこから仕入れているんだとか。


 どうしよう、そんな事態になっていただなんて。

 私なんて今日まで壊れた家具をバラして薪にしていたのに。

 軍は私を追放した経緯があるから、あまり頼りたくないし……うーん。


「さいわい、瘴気の森には強いモンスターは居ねぇんだ。軽い木材や薪を採ってくるだけならジュリアの姉ちゃんでもできると思う」

「本当ですか……? 私、本当に戦闘なんてしたことないんですよ?」


 なにしろ六脚ネズミに悲鳴を上げて腰を抜かすほどだったのだ。命の危険を冒してまで木材が欲しいかっていうと……うん、かなり微妙。



『おいおい、姫様よ。もしかして俺っちを忘れてやないかい?』

「キャロ……!! まさか、貴方が私の代わりに戦ってくれるっていうの?」


 ピョンとテーブルの上にジャンプして存在をアピールするマンドラゴラ。

 食材としては優秀なのは分かっているけれど、ひょっとして戦闘までできるわけ?


『おうよ。何しろ俺たちゃ英雄の英雄だしな!!』

「それってブルーノートさん達が言っていた、『精霊姫と八人のマンドラゴラ』の話? でもあれって創作のお話でしょう?」

『キャロキャロキャロ。なめて貰っちゃ困るぜ。巨大なドラゴンだって、俺っちの拳ならワンパンよ。だから安心して俺っちの背中に守られていれば良いぜ』


 おおっ、それは随分と凄い自信だ。

 なんだか本当に騎士様に守ってもらうお姫様になった気分。


 だけどキャロさんや。

 貴方の背中はかなり小さいけれど、それで本当に大丈夫なのかしら?


『まぁ姫の心配も分かるぜ。それに木材だってそれなりの量を運ぶんだろうしな。……なぁ、姫。この機会に、仲間をババーンと増やしてみたらどうだ?』

「……それもそうね。キャロを含めて、もう四体しか居なくなっちゃったし」


 本当にマンドラゴラが戦えるかは抜きにしても、仲間が居てくれたら心強いのは確かだ。

 その数が多いに越したことはないはず。

 増やすだけならばそこまでの苦労は無いんだしね。


「じゃあそっちは大丈夫そうだな? 俺も森の前までは一緒に行くからよ。途中の警護は任せてくれ」

「ありがとうございます、デークさん。それでは私も準備をしてきますので……」

「おう。俺も一度村に戻ってくるわ。また村の入り口で合流しよう」


 デークさんはあれだけ大量に作ったはずのマンドラジュースを全て飲み干すと、軽い足取りで去っていった。

 二日酔いもすっかり回復したみたいで良かったわ。


 ……あの調子だと、酔っ払い共にマンドラジュースは大人気になりそうね。


「じゃあ尚更マンドラゴラたちを量産しないとだわ。さぁ、私たちも畑に向かいましょうか」

『おう、新しい仲間たちに会えるのが楽しみだぜ! キャロキャロキャロ』





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