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3話 天城美穂

少しづつ書いていきます!

 非日常とは目の前の光景の事を指すのだろう。


 不良男性の肉体が宙を舞う。人間の力だけではどうやったって飛び上がれない高度まで体は跳ね上がる。その高度は4〜5メートルだろうか。当然上昇の次は停滞ではなく落下、自由落下によって男の体は地面へと打ち付けられた。


 次の犠牲者は上ではなく、真横方向への力が働いていた。悲鳴すら上げる暇もなく男は10メートル以上後方へと吹き飛ばされた。そこは道路のど真ん中であったが幸い車の行き来は無い。まるで蹴られた小石のように体が転がりぐったりと気を失っている。


 その現象の原因である彼女は涼しい顔をしながら華麗に腕を振るう。するとその現象が引き起こされた。


 初めは男共もか弱い女一人に蹂躙されるわけがないと高を括っていた。腕の一本、髪の毛1束でも掴めれば抑え込めるとでも思ったのだろう。でもすぐに考えは覆せるされた。


 既に立っている不良など一人もいなかった。


 「・・・なんだこりゃ・・・」


 遠藤がそうこぼす。


 「ESPってやつか・・・初めて見た・・・」 


 まず通常の生活をしていればESPに出会う事など無い。そこまで稀有な存在なのだ。だがそんな稀有な存在が今目の前にいる。それは間違いなく現実だった。


 「・・・クッ・・・くそが! やりすぎだろぉよ!」

 

 一人の男が叫ぶ。どうやら一人意識を失っていない者がいるようでそいつが何かを叫び始めた。


 「やりすぎ・・・ですか?」


 初めて彼女の声が聞こえた。怒鳴る男に屈することなく正面から相対する。


 「俺らが何してってんだよ!! ただお前に話しかけただけ・・・」

 「あちら、見えますか?」


 女が指を刺す。遠藤と高宮、それに不良最後の男が指刺す方向を向く。そこには当たり前にあるはずの機器があった。この場は駅前、そんな公共の場にはほぼ設置されている防犯カメラだった。


 「私があなた達に囲まれ、腕を掴まれそうになる瞬間があのカメラに写っていると思いますが?」

 「くっ・・・だとしても・・・だとしてもだ! ESPを使ったら犯罪なんだろ!」


 この男の言っている事は正しい。非日常だろうと現実に存在している能力、それは使い方によっては悪になる。だからこそそれには法が存在する。


 全世界での共通の認識、『許可なく他人にESPを使用した者は厳罰に処される』


 ESPと言っても多種多様な能力がある。彼女のような直接的な能力を持っている者や攻撃性の無い能力まで様々、それらに共通するのは『他人に使ってはならない』。それは現状の事を指す状況である。


 「申し遅れました。私は国際ESP教育機関、イデアム日本支部の高等部2年の者です」

 「え・・・ESP教育機関・・・」

 「私は国連所属の国家でもESP使用の許可があります」

 「は・・・えっ・・・?」

 「あなたの問いには答えましたよ? それで、先ほどの私の質問には答えてくれないんですか?」

 「・・・・・・」


 男は答える事はできなかった。気が動転していたのか、それとも質問の内容の解答を知らなかったのか、結果は決まっていた。


 起き上がっていた頭部は勢いよく地面に打ちつけられた。


 倒れた数十人の男ども、その中央には涼しく髪を靡かせる彼女が立っていた。凛と立つその姿には気品すら感じさせている。だが、遠藤と高宮の時間は止まったままだった。


 「遠藤・・・それ以上近づくなよ」

 「え・・・あぁ・・・そうだな・・・」 


 彼女は被害者だ。自信に降りかかった火の粉を振り払っただけ、だがそのESP()は本物である。そんな力はきっと男子高校生など簡単に薙ぎ倒すだろう。


 「それで? あなた達もこの人たちの知り合いですか?」

 「「!!」」

 

 思った以上に高宮と遠藤は彼女に接近していた。最初は彼女を助けるために近づいた、だが今はその行動を公開してすらいる。


 女の視線が二人を捉えた。その瞬間背筋が凍る。


 敵意ではない・・・が、疑惑の視線だが緊張させるのには十分であった。


 「か・・・関係ないです!! 俺らはただ君が大変だと思って・・・」

 「・・・」


 遠藤は両手を上げて敵意がないことを示す。


 その時、高宮の服の端を後ろから掴まれた。それは後方に下がっていたはずの真衣であった。


 「真衣ちゃん!! だめだ・・・下がってて!」

 「・・・・・・でも・・・」


 ぎゅっと掴んで離そうとはしなかった。


 (まずい・・・この状態で能力を使われたら・・・)


 きっと彼女も女の子相手に能力を使ったりはしないだろう。だがこう近寄ってしまっては巻き込まれる危険性がある。


 (仕方ない・・・こうなったら・・・)


 高宮が相対しようとした瞬間・・・


 「あ・・・女の子・・・」


 彼女が真衣の存在に気がついていた。先ほどまでの敵意は消え去り、そこにはただ美人な同い年の女子高生がいるだけだった。


 「ご・・・ごめんね・・・? 怖がらせちゃったかな?」

 「・・・・・・」


 ぎゅっと高宮の服を掴みながら睨みを効かせる。


 「とりあえず・・・俺らがあの男達の仲間じゃないって事わかってもらえました?」

 「え・・・ええ、そうね」

 「よ・・・よかった・・・」


 遠藤が胸を撫で下ろす。


 「え・・・えっと、あなた達この町の人よね? 聞きたいことが・・・」

 「その前に・・・」


 彼女の言葉を遮るように高宮が口を挟む。


 「この場から離れませんか?」


 不良の男達が駅前にゴロゴロと転がっている現場。その中で立ち話をする男女。間違いなく怪しいもの達であった。





 駅前から少し離れた公園。そこに4人は移動いていた。


 移動途中、どこからかパトカーの音が聞こえていたのでおそらく駅前は今ごろかなり騒然としているだろう。


 「お、俺は遠藤って言います!! この町の高校の2年生です!!」

 「ええ、よろしく」


 声高らかに自己紹介する遠藤がそこにいた。緊張でガチガチに固まりながら、しかしニヤつきながら遠藤は彼女と話していた。


 「遠藤ぅ・・・」

 「あほ兄ぃ・・・」


 残された二人は呆れるだけだった。


 「私はイデアム日本支部、高等部2年の天城・・・天城美穂と申します」

 「天城美穂さん・・・ですね!! 可愛いお名前だ!!」


 浮かれまくっている遠藤を横にずらし高宮が前に出る。


 「あの・・・いくらESP使用の許可があるとはいえ流石にさっきのはやりすぎだったんじゃ・・・」


 きっと彼女ならもっと穏便に終わらせることもできたであろうという高宮の推察である。彼女にはずっと余裕があった。きっとさっきのだって赤子の手をひねるようなものなのだろう。


 「あぁ・・・それは・・・」


 天城はニコリと笑う。


 「男性には触れてほしくない。ただそれだけです」

 「・・・・・・へ?」


 遠藤が面白い声を出していた。


 「ある男性以外が私に触れてほしくない・・・ただそれだけです」

 「そ・・・その男性というのは・・・」

 「ふふふ♪ 秘密です」


 和かに笑ってはいる。だがその目は笑ってはいなかった。それはたかが『触れてほしくない』ということだけであそこまでの惨劇を作り出した女性の狂いが垣間見えていた。


 そんなやりとりを後ろから眺める高宮と真衣。未だ真衣は高宮の服を掴んだまま話そうとはしていなかった。そんな真衣に疑問を持つ。敵意を向ける理由が真衣にはないはずだが・・・。


 『真依ちゃん・・・もしかして・・・』


 誰にも聞こえないように小さく語りかける。


 『聞こえてたの?』

 『高宮さん・・・はい。実はあの時の会話が聞こえてまして・・・』


 あの時。それは蹂躙が始まる前に彼女が不良達と話していた会話の内容である。


 『なんでそんなに敵意を?』

 『そ・・・それは・・・』


 「ところで天城さん。聞きたいことって・・・」


 その時兄である遠藤が質問をしていた。高宮も聞きたかった主たる内容であった。だが真衣だけは聞きたくはなかった内容であった。


 「まっ・・・お兄ぃ!!」

 

 そんな妹の制止が届くことは無い。


 「私は人を探しているんです」

 「人探し?」

 「この町の人間なら分かると思うんですけど・・・」



 この質問こそが高宮の平穏の終焉であった。


 「その者は元傭兵のESP使い。海外で殺人、誘拐、強盗などの多数の犯罪に手を染めているんです」


 高宮の手が硬く握られる。


 「どうやらこの町で目撃されたのが最後のようなんです。多分この町に潜伏しているはず…





 それほど大きな町ではないここなら、見知らぬ人がいたら分かると思います。急に現れた怪しい人とか・・・知りませんか?」

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