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1話 デットエンド、最後の仕事

少しづつ書いて行きますのでよろしくお願いします!

 撃鉄音と爆音が響く戦場。


 市街戦が繰り広げられる街では女子供の悲鳴と共に地獄の光景が広がる。

 誰が始めた戦争なのだろうか。

 それとも誰かに利益がある戦争だろうか。

 いや、これはそもそも戦争なのか。


 大義名分さえ分からなくなった泥沼化した戦闘。


 殺し殺され、他者の思惑が入交り、もはや原型も無くした戦闘がそこにはあった。


 ドドドドと重機関銃を放つ迷彩服を着た男がある光景を目にする。


 彼はゲリラか、それとも正規軍か。それとも雇われただけの傭兵か。そんな彼は通常の戦闘でも、科学でさえあり得ない物が目の前に現れる。


 「気を付けろ!! ESP(超能力者)だ!!」


 だが叫ぶ彼の声は爆音と共に掻き消る。

 

 それに続くようにあまたの爆発が各地で起こり始める。対空兵器があるはずがそれを無視しての連続爆撃。それはたった一人のESP(超能力者)によって引き起こされる。


 「爆発する火炎だ!! みんな伏せろぉぉぉ!!」


 廃ビルの屋上から火炎をその手に宿す男は無数の火炎を戦場へと撃ち放つ。砲弾のように放物線を描きながら的確にその者の敵を殲滅していく。

 

 「くそっ…足が・・・」

 「くそがぁぁぁ!! 化け物めぇぇぇ!!」


 報復として放たれる銃弾は虚しく届く事は無い。放たれたロケット弾は火炎にて空中で撃ち落とされてゆく。たった一人の超能力者が現れた事で戦場の均衡が簡単に崩れ去ってゆく。


 次々と爆殺されてゆく男たち。


 だが彼らもそんな攻撃にも対処法はある。


 「こちらも呼べぇぇ!!」

 「化け物には化け物だ…」


 ESPに呼応するように出されたのはESP。その者が手を向けると撃ち出された火炎が全て空中で制止する。そしてまるで殴り返すかのように拳を振るうと制止していた火炎は全て元の場所へと打ち返された。


 スドォォォォォン


 今までにない爆音とともに相手の能力者の骸がビルから落下する。


 念動力、サイコキネシスと呼ばれる超能力を利用してのカウンターだった。


 「ざまぁ見ろぉぉ!!」

 「死にやがれぇぇ!!」


 多くの同胞を殺した男に向けられる罵詈雑言。


 ESPにはESP。それが超能力戦の常識だった。これが始まった瞬間、戦場は全く別の地獄と化す。

 

 「すげぇな。正規軍のESPをこんなにも簡単に…」

 「そりゃそうだ。なにしろ高い金を払った上に能力ブースト薬まで使ってんだ…やられてもらっちゃ困るぜ」

 「へ…まさに化け物だな」


 次の瞬間、巨大な氷塊が彼らに向かって射出された。先ほどと同じように空中で制止を試みるがそう簡単な話ではない。明らかに先ほどの火炎よりも数多くの数、数千もの氷の砲弾が放たれていた。止める事ができる数には制限があるのか続いて発射された氷弾に能力は及んでいない。


 再び、今度は氷による砲撃が着弾し周辺を氷の世界へと変えてゆく。


 そんなESPによる殺って、殺されての報復合戦。飛び交う能力の間に民間人が居ようと誰も止まらない。止められない。そんな戦場だった。


 念動力で応戦するが捌き切れなかった氷弾は人々を氷漬けに変えてゆく。戦士だけではない、その攻撃には何の罪もない民間人までもが犠牲となる。


 「反撃だぁぁ!!反撃しろぉぉぉ!!」

 

 弾が、砲弾が当たろうと当たらないだろうともはや関係ない。とにかく敵にいる方向へ放たれる銃弾は、攻撃は更に罪のない命を奪う。


 銃弾と超能力で奪われてゆく軽い命。もはや誰にも止めることはできない。


 彼を除いては――


 「おい……上を見てみろ!!」

 「何だありゃ…」


 男たちが次々と上空を見上げる。味方(ゲリラ)も、(正規軍)も。


 よく見れば黒い物体が豪速で落下してくる光景が観測できた。人間一人程の大きさの黒い物体が戦場めがけて落下してきたのだ。


 「新手のESPか!?」

 「レーダーに反応有ります…あれは能力ではありません。実在の物体です!!」

 「ならミサイルか!! 撃ち落とせ!!」

 「いえ…だけどこれは…まさか…」


 誰もがそれ(ミサイル)を真っ先に思いつく。だがある者が声を荒げた。


 「ぁァ…あれは!! デットエンドだ!!」

 「何だと!!」


 戦場に居る者全てが動きを止めていた。


 デットエンド。戦場にいる者でその名を知らない者はいない。そして共通の知識が一つ。


 「どっち側だ…それとも殲滅か?」


 影はビルの屋上へと落下する。

 その黒い者がどちらの敵なのか…それが判明するまでは誰も引き金を引けない。


 「おい、話が違うぞ!! 俺はデットエンドと戦うつもりは無いからな!!」


 そう声を荒げたのは先ほどまで最前線で戦っていた念動力者だった。そいつは黒い影が見えた瞬間に既に最前線から撤退を始めていた。


 「ふざけるな!! お前に一体幾ら金を使ったと思う! この街を占領するまでは付き合ってもらうぞ!」

 「ふざけるなはこっちのセリフだ!! デットエンドが出てくるって事はどっちかが非人道的な事をしてるって事だ!! お前らまさか…」

 「我々は崇高な目標の元占領を行っているのだ! デットエンドに狙われるわけが…」

 「おい見ろ!! 俺達じゃなさそうだ!」


 その瞬間、数キロ先の建物が一気に氷漬けとなった。それは紛れもなくつい先ほどまで砲撃戦を行っていた氷を使うESPの能力だった。


 竜巻や、土塊、雷撃などが次々と放たれている。


 それを見た戦士たちは次々と歓喜の声を上げる。


 「おおぉぉぉ!! 我々に天は味方した!! デットエンドが相手のESPどもを皆殺しにしているぞ!」

 「殺せ!殺せぇぇ!! 皆殺しにしろぉぉ!!」


 誰も口には出さないが皆が感じていた。この戦闘は圧倒的に不利だったと。こちらが念動力のESPのみに対して相手側は複数のESP能力者を持っていたようだった。超能力者の戦闘は相性にもよるが基本人数が多い方が勝つ。つまり自分達がこのまま戦闘を続けていたら負けていた…はずだった。


 ところが敵のESPは次々と蹂躙されてゆく。


 これが天の助けでなくてなんだというのか、と。


 「進めぇぇ!! このまま街を占領して――」


 完全に勝ちだと、勝利を掴んだと思っていた。


 だが数多くの戦士たちの間を何かが通過する。あまりに高速で動く物体に誰も反応できない。


 ゆっくりと通り過ぎた目で追う。するとそこには真っ黒な物体が立っていた。誰もが動けない中、一人の男が恐怖で震える。


 「や……やめてくれ…。おれはただ金で雇われただけで…」


 念動力の男が命乞いを始めた。ESPとして誰もが恐れ慄く力を持ってるというのにたった一人に恐怖で体を震わせている。


 それはあまりにも早すぎた。自分達がほんの数秒前まで見ていた戦闘は既に消え去り、敵の陣地からは何の音も聞こえてはこない。理解したくはない現実を叩きつけられる。


 莫大な資金を費やし、多大な犠牲を払い、長く戦って来た難攻不落の正規軍をたった数分で壊滅させていたのだ。


 「――――――」

 「く、くそぉぉ!!」


 恐怖に耐えきれなかったか、それとも”それ”に何かを言われたか。動かなければ生き延びられたかもしれなかったのだが彼は動いてしまった。自らの腕を伸ばし能力を発動しようとした瞬間――。


 鮮血が飛ぶ。


 跳ね飛ばされた首は戦士たちの間を転がってゆく。


 超常の力を持つものですらその者の前では抵抗すらできない。


 ゆっくりと“それ”が振り返り戦士たちに視線を向ける。黒くて輪郭しかわからない存在だがその目に映っている光景は映し出す全ての者を恐怖させる。


 「おい…まさか俺達も…」

 「――――」


 放たれた言葉を理解できる言語では無かった。だが立った一人だけその言語を知っている人物はその短い言葉(日本語)に戦慄する。


 『皆殺しだ』


 ほんの数分だった。


 街一つを飲み込んでいた戦闘はたった一名の投入によって終了した。無数の悲鳴と銃撃が続いた後、そこには何もない静寂だけが残る。


 




 戦場を一望できる丘から一人の男性、いや青年が真っ黒な外套を脱ぎ去り街を眺めている。


 プルルルル


 戦場に似つかわしくない陽気な電子音が鳴り響く。


 「はい、こちらジャック」

 『ジャック、どうだ?』

 「片付いたぞ、正規軍もゲリラ共も皆殺しにした」

 『おいおい…皆殺しだと!? 本来の目的は正規軍だけだろうが…』


 電話の相手はあきれた口調でため息を吐く。


 「この国の正規軍は数多くのESPを生み出していた。だがその実態は徴兵と言う名の拉致に近い」

 『あぁ…だからこそゲリラが生まれ、戦争が始まった。我々もESP能力者の拉致、人体実験、違法薬物による能力改造の証拠をつかんだからこそ介入をした。だがな…』

 「ゲリラどもは神に責任を押し付ける聖戦とかいう言葉を吐きながら、自国民を虐殺していたんだぞ、金を集めるためにな。」

 『だからってなぁ…。ゲリラを殲滅したらその国を統治する奴らが居なくなるじゃないか!!』

 「そんなもん国連が用意すんだろ。ハッ、傀儡政権の出来上がりだな」

 『おまえなぁ…』

 「どうせゲリラも傀儡にするつもりだったんだろ? なら一人でも民間人の犠牲が出ない方法にしてまでだ」

 『はぁ……』


 電話口の相手が頭を抱えているのだけは簡単に想像できた。


 『まぁいいさ、それでジャック……デットエンド最後の仕事を終えた感想はどうだ?』

 「―――」


  ジャックと呼ばれた少年の動きが止まる。


 「そっか…これで終わり…か」

 『お前という戦力を失うのは…正直ものすごい痛手だ。だが長年望んでいた事なんだろ?』

 「……なんだか実感が湧かなくて…」

 『約束通り、現時刻を持って我々デットエンドと貴殿との契約を解消する…お疲れさまだ』

 

 お疲れさま。


 その言葉をもらった瞬間肩の荷がすっと下りた気がした。


 ふと戦場後の街に一人の少年を見かける。


 彼は自分と同じだろう。戦場で生まれ、戦場で育ち、戦闘を見て来た。だがたった今その全ては消え去ったのだ。その少年と目が合う。それは気のせいだろう、普通の人間でこの距離の物体を人だと認識する事はできない。


 だが、目が合ったような気がしてしまう。


 二人に与えられた自由。それをどう使っていくかは本人次第であった。


 『お前…何をしたいんだ?』

 「そりゃ……」


 世界最強の傭兵集団デットエンド。


 そのトップに君臨するコード名ジャックは選択する。


 「平和な国で釣りがしたい」



 『…………はぁ?』

デットエンド→世界最強の傭兵団

ジャック→コードネーム


ジャックはコードネームで本名はちゃんとあります。

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