フェイスパック
い、今まさに衝撃的な展開が開こうとしている!
どうする私!
どうする!?
ーーー
事の始まりは、1時間前。
普通科の高校に通うどこにでもいる少女Aこと、三村明音16歳。
今年の夏休みには17になる。
いつもどおり、アニメ愛好家仲間と秋葉原に行っては、グッズを見てまわるごくごく普通の休日。
そんな私の見た目は言うまでもなく、髪の毛ボサボサのセミロングヘアーに、前髪は鼻のところまで長くして七三分けにしている。
目も悪くメガネもして、どう見ても陰キャのようだが話すことは大好き!
人とコミュニケーションとることはそんなに苦ではない。
ただ問題があるーーー
ドンッ
と、男性と肩同士がぶつかりよろめく私。
「……すみません、大じょ……」
と支え顔覗う男性が『大丈夫?』と言いかけては言葉を失う。
そこですかさず、体を持ち直し、
「大丈夫です。ありがとうございます。」
と軽くお辞儀してさろうとすると、もう一人の男性ーおそらく友人であろうーが、
「どした?」
と、男性に声をかける。
私は聞きたくないので、足早にそこを去ろうとする。
支えてくれた男性が、
「……いやマジないわ、どうしたらあんなにニキビだらけになんの?ってくらいニキビだらけ。」
「マジか!女なら肌の手入れくらいしろよな」
と、さり際に二人の男性が囁く声が少しだけ聞こえた。
ーーー
そう、私はどんなに手入れをしてもニキビが増え続けるほどのニキビでいっぱい。
ニキビあともあるくらい。
アニメ愛好家仲間は気にしてないが、他の人は違う。
私の唯一のコンプレックスである。
だからなのか、顔を隠すように髪の毛なども手入れせずいたのだ。
これが学校でも軽く噂になり、『ニキビ女』の異名を持つ私。
深くため息をつく私。
私は肌の手入れはちゃんとしてる。
化粧水に乳液、クリームもちゃんと欠かさない。
でも、中学生からニキビが次から次へと出てくる。
なんで他の子はニキビが出ないのか不思議なくらいだ。
路地を通り、いつもとは違う道で帰る。
そんなとき、ある店で足が止まった。
"化粧品"を主に扱っているコスメ店だ。
キレイなお姉さんがお客さんに化粧品を勧めている。
いいなー、とただぼんやり見つめていた。
だって、某有名コスメ店はほとんど試しに行ってみた。
でも、どれも私の肌に合わず、余計『ニキビ』がひどくなるばかり。
こんな小さなコスメ店では、私の『ニキビ』は治らないだろう。
止めていた足を動かそうとしたその時だった。
両肩をガシッと掴まれて驚いて動けない私に、
「お客様、こんなところで見るより中へどうぞ」
と、硝子に映る私よりか15センチは違うであろう優男が声をかけてきた。
爽やかなイケメンだ。
化粧もしてないのにキレイできめ細かい肌。
そう感じていると、いつの間にか椅子に腰を掛けている私。
何をしているんだ、私は!
目の前には、テーブル越しに先程の男性が立っている。
「前髪、失礼いたします」
そう言うと、私の前髪を優しくサイドに移そうとするので咄嗟に立ち、
「……あ、あの今日は……」
言い訳が思い当たらない。
もう、なんでこんなときに!
自分で自己嫌悪に浸って、下を向いていると、
「大丈夫です。貴女のお顔はとても可愛らしいですよ」
と、歯の浮くようなお世辞を返してくる。
私は、
「思ってもないこと言わないでください!」
とつい怒鳴ってしまって、恥ずかしかった。
顔が赤く染まる。
「いえ、本当のことです!大丈夫ですから、私に任せて頂けないでしょうか?」
そう言う瞳は、キレイでまっすぐな目だった。
その瞳につられ、ストンと座ってしまった。
「本当に私か、かわいいで、すか?」
縮こまるように囁く。
「はい、とても可愛らしいです!より、可愛くさせてもらえるよう手伝わせ手頂きますのでご安心下さい」
と、にっこり微笑む男性。
「遅れました、私ここのオーナーをさせて頂いております『竹中』と申します。これから担当させて頂きますのでよろしくお願い致します」
と、深々とお辞儀されついお辞儀してしまう。
これからどんな展開が待っているのかも知らずに。
ーーー
あれから、オーナーの男性の手早いこと。
新しいお肌の状態が分かる機械やその説明にてんやわんやする私。
簡単に言うと、私の顔はとても敏感で角質がやられやすいんだとか。
化粧で隠したり、普通のスキンケアは意味がないそうだ。
他はそうでもないらしいんだけど、顔だけ敏感な方はいるのだそう。
例えば、間違ったお手入れとかすると余計に肌が弱くなりやすいんだとか。
聞くと、私はニキビが出だしてからゴシゴシこするように洗顔したり、合ってないコスメを使うからだそう。
パッチテストをしても無駄なはずだ。
そして、勧められたのが『韓国コスメ』。
特に韓国のスキンケアは日本より優れて入るのは知っていたが、日本の方が安全面はあると思っていたので正直お驚いた。
漢方仕様で、洗顔からクリーム、そしてやったこともないフェイスパックまで私に合ったモノを提供してくれた。
ただ、お値段がお値段だけに試すだけで終わりそう。
そう思っていたら、
「もしよろしければこちらの店の広告に、モデルとして出ていただければお代は結構です」
と、オーナーの男性が言い放った。
「えっ!?私がですか??」
と思わず、あたふたする。
当たり前だ。
広告に出るような顔立ちはしていないのだから。
「貴女を一目みて、可愛い方なのはわかりましたので」
とまたにっこりし、
「それにここの店は開店したはいいものの、小さい店でしてね。韓国は美容大国とは知られていても余り知名度もなく、韓国コスメをもっと知って欲しいんですよ。お願いします」
と、深々と頭を下げられた。
ここまでしてもらって、断ることもできずにいた私はついに折れた。
ーーー
あれから数年後。
「ここの店あれじゃなーい?韓国コスメで有名な!」
「そうそう。この広告のモデルの子めっちゃ可愛いよね!あんな風になれるなら私も韓国コスメに変えちゃおーかなー」
なんて、お店はオーナーの予想通りの反応に、通りすがりの女の子達も気づくはずもなく。
私はと言うと、あれから朝晩毎日していたスキンケアのおかげでニキビもニキビあとも消えさり、今では前髪は眉あたりにしメガネをコンタクトにして『すっぴん』で会社に務めている。
まるで、"フェイスパック"を常にしているような自信に満ち溢れた私は、今はアニメ愛好家としてまた秋葉原に来てはアニメを楽しみつつ帰りには『あの店』に寄るんだ。
私を変えてくれた、『あの店』で『充』に会いにーーー