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魔神女王  作者: 冬ノゆうき
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隧道と防衛戦 1 - ゴンゴス

姫様が着替えをされている間にクラウサの街周辺で警戒にあたっていた第1連隊の一部を屋敷前に集合させる。

これを引き連れてアカツキ隧道で現在警備の役目をこなしている第2連隊と合流する必要がある。

連隊の召集が完全に終わる頃、丁度姫様の着替えも済んだようだ。

屋敷の正面庭園の中を姫様はこちらに歩いてくるのが見えた。その優美なる姿勢は、まるで風に揺れる花弁のようであり、庭園に佇む花々も彼女の美しさに驚き、不覚にも見とれていた。

白銀の鎧が彼女の華奢な体を包み込み、月明かりに照らされてまばゆく輝いていた。この鎧姿の姫様を見るのは、儂にとって2度目だ。

1度目はその容姿にそぐわず、鋭く無駄の無い剣技を見せる姫剣士だと驚かされたものだ。

メイドを連れて歩いてくる姫様を見ながら、儂は庭園に佇む花々とともに、彼女の安全を心の中で祈った。これから向かう場所は戦場になるかもしれない。何が起こるか分からない場所ではあるが、この美しい姫剣士が、再び平和な明日を迎えられることを切に祈る。

何せ無事じゃないと………儂が領主様に後で殺されるだろう。


「将軍。お待たせしました」

「いえ、丁度こちらも兵の召集が終わったところです。取り急ぎ集められる第1連隊の者達になります」

そう言って姫様に儂の後ろに控える兵士達を指し示す。

その兵士達は皆、姫様の姿に魅了されたのか、ぼーっとした表情をしていたが、儂が話を振った所為で慌てて姿勢を正した。

全く…緊張感が足らんぞ。

「皆さん、急の事態ですがよろしくお願いします。それと将軍――」

兵士達に軽く挨拶をして儂の前に立つ。

儂の胸までも届くかどうかという小さな姫様が儂を見上げるように見ている。

これはいかん。

精一杯跪いて視線を姫様に合わせた。

「将軍。私は戦術の事には門外漢です。前線の指揮は将軍に全任しますが、よろしいですか?」

「全任ですか?」

確かに儂は1軍の将だが、あくまで紅い血の者。加護の恩恵により筋力だけは貴族種並みにあると自負するが、貴族でもない。蒼い血の方が従軍するならば、指揮権は当然蒼い血の方にある。

「はい。お義父様なら当然ご自分で指揮されるのでしょうけど。私が軍隊の指揮なんて出来ると思いますか?」

まあ、無理だろうな。

姫様本人の資質の問題ではない。この姫様ならば兵法を半年ほど本気で勉強すれば十分1軍を指揮できる将にはなれるだろう。

しかし今は圧倒的に経験がなさ過ぎる。

そして、聡明なこの姫様はそれを良く理解されている。

「現時点では難しいかと……」

少し言いづらい事だが、儂がちゃんと口にして伝える。姫様も儂の回答に満足げだ。

「はい。私もそう思います。だから将軍に軍事に関する全権を委ねます。将軍は長く軍を率いた経験があります。今のクラウサで任せられるのは将軍しかいません。だから宜しくお願いしますね」

「しかし、それならばバルア様が――」

同じく武装した状態で傍に居るバルア将軍を指名するが、本人は論外と言った様子で肩をすくめて返す。

「部隊単位の指揮ならばともかく、紅い血の者が全軍の指揮権を任される――そんな話は聞いたことがない。この場合は当然、蒼い血の者という事で私が適任なのだろうが……残念ながらここでは私は部外者だ。今はそれでも代行という形で指揮を取っても良いが、クラウサ卿が戻られたときに必ず問題になるだろう。他領の者に簡単に軍の指揮権を任せるべきではないよ」

さらに隣に立つグラヴィス様にも視線を向けるが、首を横に振られてしまう。

「私もバルア様のおっしゃる通りかと思います。そして力不足で残念ですが、私は軍の指揮に関する勉強を何もしておりません。おそらくユークリッド様以上にこの方面では無知かと」

これはもう四方が完全に塞がれた。

逃げ場はないようだ。これ以上反対するネタも無いし、何より今は討論している時間が惜しい。

「……分かりました。姫様。軍指揮権の全権を一時的にお預かり致します」

「ええ。よろしくお願いします。期待していますね」

「万事、お任せください」

そして儂を中心に即席の作戦会議が始まる。


今のところ手持ちの兵士は150だけなので、それを50ずつ3つの部隊に分ける。

アカツキ隧道の狭い場所に陣取り、1部隊で即席陣地と槍衾で世界敵の侵攻を止める。

陣地に綻びが出来たら、後方の第2部隊が穴を埋めるようにして支援する。

第3部隊は負傷者の後方輸送と、第2部隊の支援。

時間を稼いで他領や中央からの援軍を待つ。

中央――王都からの援軍はバルア様が言われたように期待できない。しかし王都に向かったフォーティス様は、連絡を受ければ戻ってはくるだろう。

フォーティス様の側に居る兵士は10名ほどだが、フォーティス様お一人で紅い血の兵士の軽く1000には匹敵する。

フォーティス様が戻られるまでの時間稼ぎが当面の目標である。


「如何でしょうか?」

会議の面々の反応を覗う。

最初に反応したのは、ハリスハン第8軍の将軍として、儂を除いては一番実戦経験が豊富なバルア様だ。

話の最中も何度も小さく頷きなら聞いてくれていた。

「うむ。問題ないと思う。この限られた兵力では最善の策だろう」

「これはこれは!バルア様のお墨付きが得られるとは!万の兵を得た程に心強いですな!」

「将軍。私はどうすればいいですか?」

姫様が期待した眼差しで儂を見上げてくる。

「姫様は後方で――」

「嫌です」

「――と、言われると思っておりましたので。儂と一緒に第2部隊に入って、第1部隊の支援をお願いしたい。もちろんこれは世界敵との戦闘の可能性も十分にある配置になりますがよろしいでしょうか?」

「はい!是非!」

「バルア様、グラヴィス神殿長。お二方にも同様に第1部隊の支援をお願いしたいです。バルア様は我々と一緒に漏れ抜けてくる世界敵の排除。神殿長は部隊全体に対して魔法での支援を」

2人とも二つ返事で承知してくれた。

正直、蒼い血の方々がここにいる姫様やグラヴィス様じゃなかったならこの時点で話が進まなくなっていただろうけど、理解がある方々ばかりで本当に感謝である。

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