ハリスハンとミリリバン 2 - ユークリッド
馬車が動き出しました。
二人っきりになったので確認しておきたかった事をお義父様に聞いておきます。
「お義父様、一つ確認しておきたいのですが」
「何だ?」
「もし……いえ、おそらくハリスハンとミリリバンの交渉が決裂する可能性が高いと思います。その場合、如何なさるおつもりですか?」
「……やはり決裂すると思うか」
「そうですね。話を聞く限りでは、今回お互いに兵を引くつもりは殆ど無いものかと」
「…………無い」
「はい?」
「無い。何も対策が無いのだぁ~!はっはっは、何も思いつかん!」
始めに情けない声を、後半は開き直ったように言い切りました。
もう…しっかりしてください。
「お義父様……」
「そ、そんな目で見るな!?し、仕方ないだろう!……こういう交渉事や駆け引きが苦手なのだ。逆に今までよくやったと褒めて貰いたいぐらいだ!」
え?私、どんな目で見てましたか?と言うか、私が褒めるのですか?――いえ、今はそう言う事ではないですよね?
「えっと、分かりました。私に1つ腹案があります。交渉材料に使えるか、判断してもらえないでしょうか」
「おぉぉ!さすがユークリッド。頼りになるなぁ~」
……やはりお義父様に外交は任せない方がよいですね。さらに認識を深めてしまいました。
とは言っても、私もまだまだ勉強をしている身です。偉そうなことは言えませんし、お義父様のお手伝いを出来るレベルにもなっていないと思います。
やはりこれからは領内の事だけじゃ無く、領外の事も勉強していかないといけないですね。
「それでお義父様。今回の会談にあたって何か注意点とかはありますか?」
他領の方との交渉は前回のペテロニア様―――コウモリさんとで経験していますが、今回は領主様が直々に対面するはずです。色々注意点や作法とかもあると思います。
そう言われて、お義父様は何かを思い出したようです。
「ああ、そうだな。会談するにあたって、1つ十分に注意しておいて欲しいことがある。これはユークリッドの為にも絶対気をつけて欲しい」
急に真剣な表情になりました。
「分かりました。なんでしょうか?」
「――ミリリバン卿とは目を合わすな」
「……はい?」
「ユークリッドの身が穢される」
ミリリバン卿とはもちろんミリリバンの領主様の事ですよね?
何だか酷い言いようですね。
「えっと……」
理由をとても聞きたかったですが、何かを思い出しているのか、心底嫌悪な表情で顔を歪ませているお義父様に詳しく問うのは憚られたので『はい』と了解の意だけ示しておきました。




