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謎夢シリーズ

紫のアネモネ『謎夢シリーズ』

作者: 松花 陽

この物語は、深みのあるお話となっています。自分なりの語彙力で簡単かつ詳しめに書いています。うまく伝わらないかもしれませんので、ご了承ください。

みんなは、夢というものを見たことがあるだろうか?夢というのには力が存在している。それは、大きく分けて三つ存在している。

一つ、自身の心の底を知らせる力。

二つ、理想の世界を作り出す力。


そして三つが


   『先の未来を知らせる力』


□□□


学校から帰宅した僕、謎夢湊なぞむみなとは、スマホを机の上に投げて、今日も今日とてベッドにダイブする。


「あ〜…つかれたー…。」


ダルそうに体を布団に埋める。

1学期最後の一日が終わりを告げ、ついに待ちに待った夏休みが始まったのだ。

帰宅して即行にベッドに向かうのはダメかもしれないが、残念!僕は今日から夏休みなので、いつでも寝込むことができるのだ!


「さーて、おやすみなさ〜ぃ…。」


枕に顔を沈めると同時に、僕の意識は段々と暗闇の中へと沈んで行くのだった。


□□□


ぽつりっと僕の体になにかが当たる。それはとても冷たくて、冷ややかなものだった。


「これは?」


雨だった。ずぶ濡れになるほどの雨だった。

僕は困惑して辺りを見渡す。周りにはフェンスが立ち並んでいて、その向こう側からは、建物が見えていた。僕はすぐに、ここが学校の屋上であることを認識した。それと同時に、ここが夢であることも理解した。


「なんだよ、やっと学校の事忘れられると思ったのに、夢の中にまで出て思い出させんなよ…。」


と愚痴を零していると。

ガチャッと、ドアが開く音が後ろから聞こえてきた。僕は気になって後ろを振り返るとそこには……。


「すい…れん!?」


俺の友達である水蓮だった。

彼女の名前は『若林水蓮わかばやしすいれん』、僕の数少ない友人の一人だ。

どうして彼女が僕の夢の中にいるんだろ?

彼女はドアを閉めて、僕の居る方向へと歩を進める。

僕はわけが分からず頭を抱え込んでいると、

彼女がなにかを抱えていることに気づいた。

それは、紫色のアネモネだった。


「なんで、アネモネなんか持ってるんだ?なぁ、水蓮?」


素の疑問を投げかけたが、彼女は聞き耳を持たず、真っ直ぐ僕に近づくだけだった。まるで聞こえていないかの如く。


「おい!聞こえてんなら返事くらい…。」


「っ!?」


僕が彼女に触れようとした瞬間だった。彼女に触れるはずだった僕の手は、空を切るかのようにすり抜けていったのだ。

彼女は僕の体を通り抜けて、フェンスの間に手を掛ける。


「なん…だよ?これ……?」


僕の思考は、心臓が止まったかのように一瞬止まりかけた。

それと同時に、頭の中でゴロゴロと沢山の感情が入り混じり始めた。


「これはいったい、なんなんだよ!?」


切実に訴える、が

その言葉は、雨の音によってかき消されて、ただ僕は、その場で立ち尽くすだけだった。


そして、彼女が気を決したのか、フェンスを登り始めた。僕はその音を聞いて、すぐさま彼女の元に駆け寄ろうとするが、僕の伸ばした手は、言わずもがな届かなくて、そのまま彼女を見送ってしまう。


□□□


目覚めの悪い夢から、僕はやがて目を覚ます。気分が悪い夢だった。ただの夢だというのに、僕の頭にはその時の夢が鮮明に残っていた。もう一度寝たら、またあの夢を見ることになるのだろうか。そう思った僕は、布団から速やかに出る。気分を変えたいと思った僕は、外の景色を見るために、カーテンを開けた。


「うわっ。」


外は雨が降っており、もうほとんど暗くなっていた。まるで夢で見たあの時の光景と似ていた。


「ちっ…。」


思わず、舌打ちをする。

ふと、学校に目をやると、まだ明かりがついていることに気づく。ここはアパート4階、ちょうど学校の最上階と同じだ。だからこそ、学校に明かりがついている事に気づいた。


「まだ教員が仕事でもしてるのかな?」


僕は時間を確認するためにスマホを確認すると、時間の下に表示された履歴の方に視線が向く。どうやら少し前に、着信があったようだ。電話をかけてきたのは、水蓮だった。


「なんだろう?」


電話があった事を不審がっていると、ピロンッという音が手元にあるスマホから鳴った。それは水蓮からのメールだった。僕はなにかと思い、メールの中身を確認する。


「…なっ?!」


一瞬、思考が停止した。

僕は考えるよりも先に体が勝手に動いていた。僕は急いで外に出て、走った。そこに居るであろう場所へと……。


□□□


メールにあった、一通の手紙には。


『……ごめんね、さようなら。』


と、言葉がつづられていた。彼女はどういう気持ちでこれを送ったのか、僕には何一つわからない。でも、今行かないと、きっと後悔してしまうことは、なんとなくわかった。

あの時見た夢の景観。

暗い屋上、ザーザーの雨、彼女のメール、そして、紫のアネモネ。

全て、合点がいった。つまりあの夢は、僕に向けてのメッセージだったという事になる。


「はあ…はあ…はあ…。」


息を切らしながら、学校へと侵入し階段をかけ上がる。そしてやっと


屋上へと辿り着いた。


「やっと……着いた。」


どうやら、運良く屋上のドアが開いていたようだ。僕は呼吸を整えたあと、そこに居るであろう、彼女の名前を叫ぶ。


「水蓮!」


「……えっ?」


彼女は、どうしてここにいるのかわからないと言った表情で、僕の方を向いた。


「どうしてあなたがここに…?」


「どうしてってそりゃあ……。」


つい、言うのを躊躇った。

だって、君がここから飛び降りる夢を見たなんて、言えるはずがない。

信じてもらえるはずがないからだ。


「………なにもないなら、はやくどっか行って。」


そう彼女は、冷ややかに告げる。

僕は、どうすることも出来なくて、後ろへと後ずさろうとして。


ーー本当にこれでいいのか?


刹那、誰かが僕に問いかけて来る。それと同時に、僕の足は止まった。


ーーお前はこのまま、なにも出来ずに降りるつもりか?


『それは……。』


思わず口籠もる。だって、今のこの状況を打開できるものなんて無いからだ。


ーーもう一度聞こう。お前は本当にこれでいいのか?


『良くない。いいはずがない。』


切実に、そう言葉を吐く。


ーーでは、行け!


「水蓮!」


僕はまた、彼女の名を叫ぶ。

そして、彼女が振り返るより先に、僕は水蓮を包むかのように、胸の中に抱き留めた。


「なっ、何をするの?!離してよ!」


「だめだ!離すもんか!絶対に!」


僕は、さっきよりも強く抱きしめる。


「お前の中で、いったいなにが起きて、こんな事をしようとしているのか、僕には全然わからない!だけど、」


と、一拍を置いてから告げる。その、一言を。


「辛いことがあるなら!俺の胸で、思いっきり!吐けー!!」


今、彼女はどんな顔をしているのだろうか?僕にはわからない。だけど、僕の胸に顔を渦組ませて泣いていることは、分かった。


「ーーヒッグ…!…うぅぅ〜……。」


冷たくて、悲しい雨の中、彼女は全てを吐き出した。僕は静かにそっと、彼女の頭を撫でてやった。


ふと、彼女の手元に目をやると、紫のアネモネがキラキラと美しく咲いていた。

僕はその花の花言葉を知っている。


その花の花言葉は……。

 『あなたを信じて待つ』


という意味である。

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