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センス皆無の最強錬金術師~のんびり旅をしながら異世界を存分に楽しみます~  作者: 徳川レモン
三章 ブリジオスの王都

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六十話 小さな結婚式

これにて三章終了です。

恒例の書きため期間に入りたいと思います。

 トットン村を出発した俺達は西へと進み続けた。

 道中、依頼を引き受けたり冒険者相手に、アイテムを売ったりしながら荒稼ぎをしていた。そして気が付けば妙な名前で呼ばれるようになっていたのだ。


「クズ錬、俺にもポーション三本くれ」

「はいよ」

「名前の割には良い商品そろえてるよなぁクズ錬てさ」

「余計なお世話だ」


 そう、人は俺のことを『クズ錬』呼ぶ。


 どうやらブリジオスでの武道会で人でなしのような戦いをしてしまったせいか、俺はクズだと認識されてしまったのだ。しかも噂と言うのは広まるのが早いようで、俺達が行く先々でほとんどの人が俺をそう呼んだ。

 つーか人をハ〇レンみたいに呼ぶなよ。格が違いすぎて泣くわ。


 ただ、クズと呼ぶ割には人々の対応が温かいので、どのような噂が広まっているのか少しずつだが気にもなっていた。

 まぁどうせくだらない噂だろうが。


「ねぇちゃん、これも買うよ」

「はいっ! ありがとうございます!」

「ほんと美人だよねぇ。クズの旦那にもったいない」

「ふふっ、義彦は素敵な旦那様ですよ?」


 エレインが商品を紙袋に入れて客に渡す。

 受け取った男達は鼻の下を伸ばして店の近くでぼーっとしていた。


 あいつらのああなる気持ちは分からなくもない。

 最近のエレインは特に綺麗になったし色気が増したからな。

 なんというか少女から大人の女性になった感じがするのだ。

 まぁ中身は全然変らないが。


「そろそろポーションがなくなりそう。リリア、追加を出してもらえる?」

「へーい」


 バスの中にいたリリアが追加のポーションを出す。

 それを見た冒険者達はまだ購入できるチャンスがあるのだと喜んだ。

 ウチのポーションは効果抜群に安価だから当然の反応だ。


 アイテム販売は基本的に都営バスで行っている。

 バスの中ほどにある搭乗口前でテントを作り、すぐに出せるように在庫は車内に置いている。

 おかげで人の覚えが早く、都営バスを見た途端に移動販売だと気が付く奴がかなり増えた。加えて商品も品質が良く安いと評判が評判を呼んで、わざわざ宣伝をしなくとも行列ができてしまう盛況ぶりだった。


「ただいまでござる。お願いされていた物を買ってきたでござるよ」

「サンキュー。そんじゃあバスの裏にでも置いておいてくれ」


 ロナウドが大量の布を抱えて戻ってくる。

 あれらは仲間達の服を作る為の材料だ。自動人形オートマタに頼めばなんでも作ってくれるからここ最近、布ばかり購入していたりする。

 それに夜にもなにかと衣装が必要だしな。でゅふふふ。


 程なくして商品は完売。

 並んでいた冒険者達は店の前から去って行った。


「――本日の売り上げは百五十万ブロスです」

「こんなに簡単に儲けられるなんてな。もっと早くに商売を始めていれば良かったよ」


 バスの中で山となる銀貨と金貨に笑いが止まらない。

 チョロい。チョロすぎるぞ異世界。お前ら財布の紐が緩すぎるだろ。

 だがずっとそのままでいてくれ。俺はそんなお前らが大好きなんだよ。


「腹減った。なんか食いに行こうぜ」


 座席で寝転がるリリアが空腹を訴えていた。

 近くではピーちゃんがひなたぼっこをしていて気持ちよさそうだ。


 俺は金を革袋に入れてリュックの中へと投げ入れる。


「そうだな。せっかくここまで来たんだし今日は店で食うか」

「どんな食事が食べられるのか楽しみです」


 窓の外を見れば大勢の人々が通り過ぎて行く。

 立ち並ぶのは趣のある石造りの建物ばかり。


 ここはブルジオスから遙か西にあるムーバン帝国だ。


 で、今いる町はそのムーバン帝国の辺境の町アスピル。

 雰囲気はどことなくトルコっぽい印象だ。

 丸みを帯びた屋根に色鮮やかな壁面などが目をひく。

 それに周囲も岩山が多く環境も似ているようだ。


 バスをリュックに仕舞ってから俺達は町の中を散策し始めた。


「へぇ、ガラス製品なんかがこっちには多いんだな」

「はい。ムーバンはガラスや鏡などを主に扱っていまして、そのほかにも金属加工などが表に盛んです。独特の文化を形成していますから、どれをとってもブリジオスでは珍しいですけどね」


 今まで行った国もなかなか興味深かったけど、このムーバンは特に異国感がある。

 町全体の雰囲気ももちろんのこと、吸い込む空気も様々なお香の匂いが混じっていて妙に落ち着くのだ。

 時折東から来ただろう格好の者もいて交易も盛んであることが分かる。


「ここ良さそうじゃないか」

「ん? ああ、そういえば飯を食いに来てたんだっけ」


 目的をすっかり忘れてた。

 リリアの選んだ店に入れば大勢の客が美味そうに肉を食っていた。

 こっちの主食はナンのような皮に、タレを付けて焼いた肉と野菜を巻いて食うらしい。

 早速席について注文するとその量に店員が驚く。


「三十人前って、本当に食べられるんですか?」

「大丈夫大丈夫。金はあるしいつもそのくらい食うから」

「それならいいですけど」


 怪訝な表情を浮かべつつ店員は注文を受け取る。

 ま、いつも店に来たらこんな感じだ。

 大体の店員は俺達の食う量に驚くんだよな。


 数十分後、テーブルには大量の料理が並んだ。


「あぐっ、やっぱこっちのメシは美味いな!」

「ウミャ!」


 がつがつ頬張るリリアにつられてピーちゃんも肉に勢いよくがっつく。

 俺は取られないように自分の料理を守りつつぱくつく。


「えい」

「あ」


 エレインが隙を見て俺の皿から肉をとった。

 だが、可愛いから許す。ただしリリアおめぇは駄目だ。


「えい、でござる」

「おいこらロナウド!」


 エレインの声真似をして肉をかすめ取るな。

 つーか語尾で丸わかりなんだよ。


 くそっ、いつの間にかタレ付きの肉だけが消えたじゃないか。

 でも残ったタレがクソ美味いから、野菜だけ巻いて食っても絶品だ。


「お前も食えよ」

「がちがち♪」


 鎧も飯をむさぼりご機嫌だ。

 どうせ食い足りないだろうからあとで肉の塊でも食わせないとな。

 ほんとウチは食費のかかる奴らばかりだ。


「そう言えばリリアの故郷ってもう近くなんだよな?」

「ムーバンを超えた先にあるんだ。でも今ではもう魔物で溢れてて誰も住んでない場所だよ」

「そうなのか……」


 故郷が消えるってどんな感じなのだろう。

 リリアはいつもヘラヘラしてて悩みなんてなさそうにしてるけど、やっぱ影では悩んだり泣いたりしてんのかな。

 そろそろ俺も仲間のことをちゃんと知るべきかもしれない。


「義彦、ちゃんとガストリアに寄ってくれるよな?」

「もちろんだ。お前の生まれた場所だもんな」

「うん。やっぱり義彦はいい奴だな」


 彼女は満面の笑みで再び料理を頬張り始める。

 できれば良い里帰りにしてやりたいが、それはできないのだろうな。


「なぁ例の勇者様の噂を聞いたか?」

「帝都で名をあげた冒険者らしいな。そんなにすげぇのか」

「それが聖剣でなんでもぶった切っちまうって話だぜ。おまけに飛竜まで倒してお姫様がメロメロなんだってよ」

「聖騎士でもねぇのにそんなに強ぇなんて反則かよ。しかもイケメンなんだろ。世の中不公平にできてるよなぁ。お、姉ちゃん酒くれ」


 隣の席で二人の男性が会話をしていた。


 勇者か……この世界にもやっぱそういうのがあるんだな。

 まったく耳にしなかったから聖騎士がその役割を担っているのかと思ってたよ。


「なぁエレイン。勇者って?」

「国がたった一人に贈る最強の戦士としての称号です。といってもどこの国でもと言うわけではありません。称号を与えられるのは『勇者の儀』と呼ばれる、特殊な儀式を行うことのできる大国だけですね」


 へぇ、特殊な儀式ねぇ。なかなか面白そうな話じゃん。

 それに最強の剣士を目指している身としては見過ごせない存在だ。

 近いうちにどれほどの相手なのか見ておくべきかもな。


「お会計頼む」

「は……いっ!?」


 テーブル上に山積みとなった皿。

 店内は騒然となった。



 ◇



 アスピルの近くにはゲートがある。

 町では謎の古代遺跡とか言われててずっと放置されているそうだ。

 岩山に隠れるようにして設置されているそこから、俺達は錬金術師の宮殿アルケミストパレスへと毎日帰還していた。


『ご主人様、お願いされていた物が完成いたしました』


 鍛冶工房に入ってきたナナポンがそう報告する。

 両手に持っているのは純白のドレスだ。


 そうか、ようやくできあがったか。


 すでに準備はできている。

 あとはドレスが完成するのを待っている状態だった。


「明日だ」

『承知いたしました』


 恭しく一礼した自動人形オートマタは部屋を出て行った。





 翌日。俺は白いタキシードを身につけていた。

 屋敷の庭には赤い絨毯が敷かれ、神父役のロナウドが目の前に立っていた。


 ゴーンゴーン。


 どこからか鐘が鳴らされる。


 背後で布を擦る音が聞こえた。

 ようやくその時が来たのだ。


 俺の隣に純白のドレスを着たエレインが並び立つ。


 ちらりと横を見ると、その顔は化粧が施され普段の二百倍可愛くて綺麗だった。

 すると向こうもこちらをチラリと見て恥ずかしそうにする。


 ヤバい。可愛すぎて死にそうだ。


「あー、オホン。では婚礼の儀式を始めるでござる」


 ダンダン。と木製のハンマーで机を叩いた。

 裁判所かよと思わなくもなかったが、ここは地球ではないので細かいことは言いっこなしだ。ま、それに結婚も裁判もある意味では似たようなものだ。


「汝、西村義彦はエレインをいかなる時も幸せと悲しみを分かち合い、いかなる時も愛すると誓うか」

「誓う」

「汝、エレインは西村義彦に永遠の愛を誓うか」

「誓います」

「世界におわす三神に報告申しあげる。ここに新たな夫婦が契りを交したことを」


 再び鐘が鳴った。

 するとスタンバイしていた自動人形オートマタが軽快な演奏を始める。

 他にも百体以上の自動人形オートマタが拍手を贈ってくれた。


「結婚おめでとうエレイン!」

「ありがとうリリア」

「おめでとうでござる義彦殿」

「ああ」

「ミャ!」

「ふふ、ありがとピーちゃん」


 四人と一匹だけの小さな結婚式。

 けれどそれでいい。

 俺達がお互いを夫婦だと分かればそれでいいんだ。


「できればお父様にもこの姿を見て貰いたかったな」

「そうだな。いつか和解できたらいいんだが」


 少しだけ落ち込む彼女を俺は抱きしめる。

 気持ちは痛いほど分かる。

 俺だって死んだ両親に晴れ姿を見せてやりたかったよ。


 今はまだ逃げるしかできないが、時が経てば必ず彼女と父親との和解を進めるつもりだ。

 だって悲しいだろ。わかり合えないまま死に別れるなんて。


「そろそろ撮影のお時間です」

「分かった」


 ナナポンに促されて俺達は横に並ぶ。


 まさかこの世界にカメラまであったとは驚きだ。

 仕組みは地球のものとはかなり違うみたいだがこの際どうでもいいことだ。

 全員揃って笑顔を作る。


「それでは撮りますよ! 三、二、一、はい!」


 カメラを持つナナポンがシャッターを切る。

 カシャ。ウィーン。

 さっそく写真ができあがったらしい。


「……なんだこれ」

「ぷふっ!」


 できあがった写真には俺達の他に別の物まで入っていた。


 端でポージングをしている風の精霊ズ。

 ピーちゃんはカメラなどお構いなしに目の前を横切っている。


 そして、俺のすぐ後ろにはうっすらとあの女幽霊の姿があった。


「賑やかな記念写真になりましたね」

「そうだな」


 彼女は幽霊には気が付かなかったみたいだ。

 目をこらさないと分からない程度だし大丈夫だろう。


 リリアも「へー」と嬉しそうに眺めていた。


 最後に受け取ったロナウドが目を見開く。


「ん?」

「どうしたロナウド」

「んん?」

「だからどうしたんだって」

「んんんんん!?」


 それから彼は一言だけ発した。



「姫が映っているでござる」



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― 新着の感想 ―
[一言] 佐々木さんとこの姫さんでしたか。
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