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12-5:雄二さんと面会2

本日三話目。

最新話で跳んできた方は御注意。

「ところで、俺や雄二さんが現実リアルと違うみたいに、真理恵さんも違いますか? 俺はここでの真理恵さんしか知らないから……」

「ん、うーん……」

「言ってしまって構いませんよ? 城太郎さんにならどんな恥ずかしい話を聞かれても今更ですから」

「そ、そうかい? まあ……一見すると楚々とした御嬢様なんだが、言動の端々に溜め込み過ぎて抑え切れなくなったものが滲み出ているような感じだったな。今はすっかり毒が抜けたみたいになってる」


 溜め込んでいたのは欲求不満だろう。もちろん性的な意味での。

 真理恵さんの欲求を現実世界で満たすのはほぼほぼ不可能だと思われる。その上、男性経験もまともな恋愛経験も無かったのだから、不満は溜まりまくっていたことだろう。皮肉なことに、kantanの仮想世界で淫らな行為を存分に行って不満を解消した結果、雄二さん曰くの毒が抜けた状態になって清楚な御嬢様然とした佇まいを取り戻しているのだそうだ。


「ここは本当に素晴らしい世界です。その上、明日からはゲームの中でも痛覚再現が100%になるなんて……私の要望を採用して頂いて感謝しています」

「それがあった。雄二さん、やってくれましたね」

「んん? ああ、その感じ、城太郎君も見逃しちゃったクチかい?」

「そりゃもう! 創造神様にしてやられましたよ! ……やった理由は判らないでもないんで文句は言い難いんですが……」

「悪いね。しかし城太郎君なら大丈夫だろう? 聞いてるよ。“死に憶え”」

「そりゃまあ……“客観視”の深度を調節すればどうにかなると思いますが」


 自分とは別に自分を客観視するもう一人の自分を想定し、自分としての主体をもう一人の自分の方へと移す。それは俺が現実から逃避するために編み出した術だ。後々、似たような技術がVRゲームの界隈で“客観視”と呼ばれていると知り、俺も自分のそれを“客観視”と呼ぶようになった。事情があって年々逃避の度合いが増していき、現在は六段階まであり、段階間の微調節も可能だ。

 これまでの痛覚再現50%下では一~二段階くらいで通用していた。

 100%再現でも三~四くらいにすれば我慢できる範囲に収まるだろう。自分と意識の距離が離れるにつれ周囲への認識や体の操作が難しくなってしまうから慣れは必要だろうけど。


「俺は良いとして他のプレイヤーは大丈夫なんですかね?」


 思い浮かぶのは“浜辺の集落”にいるアロハ達だ。

 痛覚再現50%ですら戦闘に嫌気がさして生産職プレイに逃げるプレイヤーが続出している。これが100%になったなら。


「ゲームどころじゃなくなっちゃうんじゃないですか? それはそれで、雄二さん達にとってマズい事になるのでは?」


 “仮想世界の時間を加速させる実験”と表向き銘打っているものの、加速させる技術に関しては既に完成しており、実際の所今更実験なんかする必要はない。“探究者”達のために時間加速させた仮想世界を構築して維持していくことこそが真の目的だ。だから加速世界の寿命を左右する“プレイヤー”のゲーム進行を遅らせようと痛覚再現100%などという劇薬を投入したのだ。

 それは判るのだが。

 表向きだろうと何だろうと、そう銘打っているからには“仮想世界の時間を加速させる実験”の体裁もきちんと整えておかなければならない。痛覚再現に委縮してプレイヤーの活動量が減ってしまったら、実験の体裁に必要な負荷が稼げないのではないだろうか。


「ガチなゲーマーならこれくらいは越えてくる」


 しかし、俺の心配を他所に雄二さんは確信を持っている風にそう言う。


「城太郎君は『縛りプレイ』の動画を良く見ていたんだろう?」

「え? 縛りプレイですか?」


 思わず真理恵さんを見てしまった。

 雄二さんが言っているのがゲーム攻略動画における『縛りプレイ』であり、エッチな意味など微塵も含んでいないのは普通に理解しているのだが、つい最近も縛ってプレイしたばかりなのだから仕方ない。


「ん?」

「何でもないですよ。はい。『縛りプレイ』動画、見てました」

「かくいう僕もゲームバランスを考えるうえで参考になるからああいう動画を見るようにしていてね。時折だが、開発者目線で『これはバランス取れてないだろう。テストプレイしてないのか?』と担当者の正気を疑うような目茶苦茶な難易度の敵を鮮やかに倒してのける動画があって……そういうの、城太郎君は知ってるかな」


 俺は頷きで肯定を返した。

 以前俺がプレイしていたモンスターをハンティングするゲームに登場した最強クラスモンターの一角がそんな感じで、攻略難易度は最狂だった。ほぼ全ての通常攻撃が一撃瀕死級であるのに加え、即死級でありながら通常ガード不能な特殊攻撃や全方位攻撃、そして特殊ガードさえ不可能な確定死の範囲攻撃までを持つ。さらには攻撃モーションを見てから反応するまでの猶予時間が最短では人間の限界に迫る0.2秒という厳しさ。ついでに10分経過で自動的に討伐失敗になる制限時間付き。

 新モンスターが登場すれば即日――数時間後には動画がアップされるのが常態だった攻略動画界隈において、実装後二日間、討伐報告が一切上がらなかったと言えば、こいつの難易度がどれほど異常だったかが判るだろう。この討伐一号動画もそれ以降の後続も全てがパーティーでの攻略。つまり複数人の火力を集中しての結果であり、ソロ討伐者が現れたのは実装後七カ月が経過した頃だった。


 俺が見たソロ攻略動画では、制限時間内に倒しきる火力を得るためにHPを減少させる代わりに攻撃力を増すスキルを発動させ、これによって被弾=即死亡となった状況下、反撃効果のある特殊ガードと無敵時間が発生する回避攻撃(どちらも入力受付時間が極めてシビアだ)を駆使して討伐を果たしていた。


「ガチなゲーマーがガチに攻略に乗り出せば、開発者が考える限界の二、三枚上を余裕で越えて来る。100%になればもちろん委縮するだろうし、委縮させるのがこちらの狙いではあるけれど、そこで諦めたりはしない。攻略するためにあらゆる手段を模索する。彼らはそういう人種なんだよ」


 賞金獲得を目指して実験に参加した千人のプレイヤーは漏れなく腕に覚えのあるゲーマーばかり。現在攻略組として活動しているのは痛覚再現50%で篩に掛けられた精鋭揃いと言える。多分、ガチなゲーマー率は結構高い。

 それなら実験の体裁的にも問題は無さそうだ。


「と、すると、後は真理恵さんか」

「私がなにか?」

「別な意味で、痛覚再現100%だとゲームどころじゃなくなってしまうんじゃないかと」


 痛覚再現50%ですら大ダメージに伴う痛覚再現でイッテしまって行動不能になり、そのまま逝ってしまう場面が何度かあったのだ。これが100%になったなら。


「それなら問題無いと思います」


 しかし、俺の心配を他所に真理恵さんは事も無げに言う。


「再現率を下げて良い感じに調節しますので」

「え? できるの?」

「真行寺さん、再現率は100%で固定になるんだが……」

「調節するのは快感の再現率です。もう、判っているくせに言わせないで下さい恥ずかしい。……あ、もしかしてこれは羞恥プレイ」

「いや羞恥プレイじゃないよ?」


 とは言え変態性癖関連を雄二さんもいる場で話題にするのは不適切だな。反省しよう。


「今までも城太郎さんとパーティーを組む時には調節していました。『パーティーを組む時は真面目に』が条件ですから、ちゃんとゲームができるくらいに再現率を下げていたんです」


 ……俺が反省しているのに、真理恵さんは恥ずかしそうにしながらも、その恥ずかしい状況を楽しむように話し続けていた。雄二さんがちょっと引いている。

 が、その話によれば“ノブさん”達とパーティーを組んでいた頃に表面上は普通のプレイヤーとして振る舞えていたのも、快感再現率を低めに設定していたからだそうだ。


 なるほどなぁ。

 ……って、あれ?

 快感再現率を調節してって、なんかおかしくないか?

今回の話では

https://www.youtube.com/watch?v=ysqCQQANZHU ←撃退する方

https://www.youtube.com/watch?v=_aVmIHv9cdU ←討伐する方

の動画を参考にしています。

この人本当に凄いです。

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