7-1:タイタン討伐報酬
本日18、20、22、24時に連続投稿します。
タイタンが変じた光の粒子が完全に消えると同時に次のステージへと続く扉が現れた。
「ありがとうございます! これで、ようやく森から脱出できます!」
真理恵さんは輝くような笑顔である。
嬉しそうで何より……ではあるのだが、その笑顔の裏にあるのがマンネリ化した森ステージを後にして新たな刺激に溢れる次のステージに進めるというM的歓喜であるのを知っている身としては「そこまでなのか」とも思ってしまうのだ。
「まあ何はともあれお疲れさま」
言いながら回復薬を飲む俺。
前回フェンリル戦の時には討伐達成の勢いのまま思わず客観視を解除してしまい、激痛に悲鳴を上げる結果となった。同じ過ちは繰り返さない。俺は経験から学べる男なのだ。
きっちりとHPを全回復させてから客観視を解除し……その途端にくらっときた。タイタン凶暴化時の大ダメージを回復させて以降、ちょくちょく回復薬を飲んでいたせいでポーション酔いの症状が出ている。客観視の効果で他人事として遠ざけていた酔いが、解除とともに自分事として自覚されたのだが、不思議なのは俺以上に回復薬のお世話になっていた真理恵さんにはポーション酔いの兆候すら見受けられないことだ。
「真理恵さんはポーション酔い大丈夫なの?」
「ポーション酔いですか? 特には。私はあまり飲んでいませんので」
「……ああ、そういうことになるのか」
真理恵さんの回復はほとんどが俺の“投げつけ”による。飲んでいないのだから酔わないのだと言われれば「そりゃそうか」と納得するしかない。
しかし……相互に投げつけて回復すればポーション酔いの心配がなくなるなら、これもパーティーを組むメリットの一つになるな。ソロのままでいたら気付けなかっただろう。まあ、このメリット、真理恵さんとの二人パーティーだと俺には恩恵が望めないが。さすがに盾職の真理恵さんに俺の回復を頼むわけにもいかない。
ゆくゆくはパーティーメンバーを増やして、俺自身も恩恵に預かりたいものだ。それには先行している他のプレイヤーに追い付かなくてはならないから難しいのだけど。
少し酔いの回った頭でそんな事を考えつつ、俺の指はゲーマーの本能のままに動いてインベントリを開いていた。ボス戦後のお楽しみ、ドロップアイテムの確認だ。
初回討伐報酬の強化符四種類が一枚ずつ。換金アイテムの『巨鬼の耳』。
他にタイタン素材として『巨鬼の牙』『巨鬼の頭骨』『巨鬼の胸骨』『巨鬼の大腿骨』がある。骨が多い。人型魔物の皮は素材にし難いのだろうが、異様なまでの骨率の高さだ。
面白いのは『巨鬼の大腿骨』で、素材であると同時にこれ単品でもメイス系の武器として使えるようになっている。実体化させてみると骨盤との接合部になる球状の大きな突起が丁度ハンマーヘッドのようになっていた。
攻撃力はそこそこながらゴブリン特攻と『???特攻』が付いている。『???』の部分は今後対象のモンスターが登場した時点で判明するのだろうか?
「城太郎さん」
「ん? なんだい?」
呼ばれて視線を上げた直後、真理恵さんの重鎧が消え、鎧に抑えられていた胸がぶるんと解放される。何度見ても素晴らしい。いや、何度でも見せて欲しい。もう装備と除装だけ繰り返してくれても良い。……って、何を考えてるんだ俺は。思った以上にポーション酔いが酷いのか?
「城太郎さん、お約束の“報酬”をお支払いします」
「え!? 今!? ここで!?」
「はい。ここなら誰も来られませんので」
「……うん、まあそりゃあそうなんだけど」
報酬とは他でもない“真理恵さんのおっぱいを揉む権利”である。
考えてみればその権利をいつどこで行使するのか決めていなかった。乳揉みは軽度とは言え人目を憚るれっきとした性的行為。どこで実行するかとなると、このボスエリアはうってつけかも知れない。
始まりの街や森の砦、草原や森ステージに他のプレイヤーがいなかったのは、単に先のステージに進んでいるからであって、“誰でも来られる場所”であるのは変わらない。これまで出会わなかっただけで、素材採取目的などで引き返してきたプレイヤーに出くわす可能性はゼロではないのである。“外の街”にあるマイルームならその心配はないものの、お互いのプライベートエリアを行き来する程の仲になっているとは言い難い。
その点、ボスエリアなら公共の場でありながらも他のパーティーは絶対に立ち入れない、人目を憚る行為を行うには絶好のロケーションであるのだが、しかし今すぐとなると……心の準備が……。
「あ、衆人環視の中で私の乳房を弄んで辱めたいですとか、いつ誰に見られるのか判らないスリルを演出したいとか、そういうご希望があるのでしたら……」
「ないない! そういうのないから!」
もう心の準備がとか言ってられない。変態ワールドに引き込まれる前に報酬を貰ってしまおう。
「それでしたら……どうぞ」
「お、おう」
おっぱいを差し出すように胸を張りながら恥ずかし気にしているのは本当に恥ずかしいのか演出なのか。酔いの回った俺には判らない。いや……女性と付き合った事の無い俺じゃあ素面でも判らないか。
まあいい。
揉もう。
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揉んだ。
至福の時間だった。
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そう、“時間”である。
再び考えてみれば、決めていなかったのは“いつ”と“どこで”だけでなく、“どれくらい”もだったのだ。何回とか何分とか、“どれくらい”と定めずにただ“おっぱいを揉む”だけだった。
最初は「遠慮せずに両手でどうぞ」とか「もっと力を入れても良いですよ」と煽っていた真理恵さんが無言となり、甘い息遣いをBGM代わりにポーション酔いで気が大きくなった俺は揉みに揉みまくり、我に返った時には三十分ほどが経過していたのである。
いくらなんでも三十分は揉み過ぎだろう……。
我が事ながらどうかと思う。
「あまりにも一生懸命揉んでいるものですから、止めるに止められず」
お気遣いありがとうございます。
「でも、城太郎さんも報酬として魅力を感じて下さったようで安心しました。また揉みたいですよね?」
おっぱいを揉む権利はボス戦限定パーティーを組むのが俺の一方的な善意に依らないように真理恵さんが差し出す対価だ。対価に魅力が無ければ、やはり善意に依ってしまう。
俺の執着振りから対価としての価値を確信したのだろう。
まあ、俺の返答は「もちろん」である訳だが。
「止め時が判りませんので次回は時間を切りますね。五分でどうでしょうか?」
「あ……うん……まあ、そうだね……」
“どれくらい”を決めていなかった不備を思えば、こうして時間を区切るのは当たり前の措置ではある。が、今回成り行き任せに三十分だったのに次回が五分なのは正直がっかりだ。
そんな内心を隠しきれない俺に真理恵さんがにっこりと微笑みかける。
「でもそれだけでは報酬がグレードダウンしてしまいますから……そうですね、次回は服の中に手を入れて生揉みということにいたしましょう」
「マジで!?」
これは期待が高まる。
ついでに気分も高まってきた。揉んでる間は無我夢中でそれどころではなかったのが今になってキタと言うべきか。俺は今、無性にムスコと遊びたい気分になっていた。
「そ、それじゃあ次の拠点に進んで、そこで解散で良いかな?」
「はい」
そうして扉を潜った先に広がるのは寂れた農村だった。
正確には廃された農村を再利用した拠点。
ステージ名は“廃村と荒野”となっている。
そして……やはりプレイヤーは誰もいない。拠点施設に入ればNPCはいるのだろうけれど、NPCはあくまでもNPC。無人なのは変わりない。それがまた廃村の物寂しさを際立たせている。




