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4-5:強化符

 爽やかな朝だった。

 昨夜、清一郎たちとの飲み会の帰りに、俺はこれまで入店できなかったとあるお店に向かった。思ったとおり設定変更を終えた俺は何の問題も無く入店できるようになっていて、そこで穴の開いた筒状の玩具とぬるぬるする液体を購入した。

 あとはもうマイルームに一直線。

 エロも解禁された有料コンテンツのラインナップを見て、俺は改めて織姫の凄さというものを思い知らされた。肌色率の高いサムネイル画面とサンプル動画をチェックしたところ、本職のお姉さん方でも織姫には到底太刀打ちできていなかったのだ。織姫よりも美人、織姫よりもスタイルが良い、織姫よりもエロい。どれか一つでも満たしている女優はいないかと探してみたものの、これが見当たらない。脱いですらいないのに三冠を達成した織姫こそ恐るべし。

 やはり身近な知り合いをネタにするのはどうかと思って一応有料コンテンツを当たってみたのだが……ここに至って当初の予定通り織姫をネタにすることにした。時が経って記憶が薄れてしまえば有料コンテンツの方が上になるだろうが、鮮明に思い出せる今はダントツで織姫のほうに軍配が上がる。まあ、あれだけ卑猥で扇情的な挑発を繰り出してきたのだ。ネタにされるくらいは織姫の自業自得。そう自分を納得させて織姫をネタにして……そして俺は賢者になった。しめて三回。

 いったい何時以来だろうか。久し振りに思う存分ムスコと遊んだ俺は深い満足を抱いて就寝し、故に今朝の目覚めは爽やかだった。


 *********************************


 二日間の休養と超久し振りなスッキリ体験で気力は充実しまくっている。

 今日から攻略再開だ。

 さっそく森の砦へ……と言いたいところだが、その前に片付けなければならない事がある。フェンリル討伐時に得た特別報酬の扱いを決めないといけない。


 実はフェンリル討伐の報酬には二種類あった。

 一つは牙や毛皮などの“フェンリルの死体から剥ぎ取れる素材”、つまりは通常のドロップアイテム。もう一つがフェンリルとは直接関係しない特別な報酬である『強化符』というものだ。複雑で雰囲気のある紋様が描かれた羊皮紙はゲーム的には『強力なボスモンスターを討伐した証として神々から与えられる』と位置付けられている。武器、防具、スキル、アビリティに対応するものが一枚ずつ、ボスモンス初回討伐時に入手できる。


 効果はそれぞれこんな感じだ。

『武器強化符』と『防具強化符』はそれぞれのベース部分を強化してくれる。

『スキル強化符』はスキルの即時三段階成長、『アビリティ強化符』はアビリティの構成要素から一つを選んで強化、だ。

 どれも今後の攻略を楽にしてくれる有益な効果になっている。

 ヘルプ情報によれば二回目以降のボス討伐でも極低確率でランダムに一枚入手となっているものの、公式に“極”低確率と詠っている以上、実際に入手するには気の遠くなるような数を回して、豪運に恵まれなければならないだろう。精神衛生上、二回目以降には期待しない方が良い。いっそ存在自体を忘れてしまおう。死んだ魚のような目になって延々フェンリルを狩り続けるなんて御免だ。

 と、すれば強化符は初回討伐分のみ。効果が有益であるだけに、限られた強化符をどう使うのかは慎重に吟味しなければならない。


 さて、武器と防具はどうするか。


 武器と防具の性能は『ベース武具の性能+素材での強化分』として表され、どんな素材を使うかによって攻撃力や防御力が変わり、特殊属性が備わったりする。注意すべきは強化素材を延々追加していくのではなく、入れ替えるのだということ。ここでプレイヤーは選択に迫られる。例えば、これから攻略を進める森ステージの素材を用いれば武器の攻撃力は確実に上昇する。しかし素材の入れ替えで甲針虫の針が除かれてしまえば麻痺属性も同時に失われてしまうだろう。防具も基本的な防御力以外に、使用素材によって斬打突のどれに高い耐性を備えるのかが変わってくる。どちらもステージ毎のメインモンスターに合うように素材を入れ替えていくことになるだろう。

 そんな具合に、入れ替えによって効果が失われる素材での強化分と異なり、ベース武具そのものの性能を上げてくれる強化符の効果は永続する。それだけに失敗すれば損失もまた永続してしまう訳で。

 せっかく強化した武器や防具をこれからもずっと使い続けるのかどうか。

 俺は既に片手剣からメイスへと変えている。しかし最後までメイスでいくのか? もしかしたら片手剣に戻すかも知れないし、槍に鞍替えするかも知れない。いやいや、相手によって適した武器に変える必要に迫られれば他の武器だって候補に上がるだろう。小盾はどうだ? 革鎧は? そう考えると強化符をどれに使ったら良いのか決め難い。


 ……良し、決めた。

 保留しよう。


 決めるための決め手に欠けたまま焦って決める必要は無い。

 極端な話、ラスボス戦まで温存しておいて、ラスボス戦で使う武器や防具に集中投入したって構わないのだ。と言いうか、それが一番確実に無駄にしない選択な気がしてきた。

 まあ『ラストエリクサーを使わないままゲームをクリアする』ような勿体無い精神が行き過ぎて逆に勿体無い状況に陥るような事の無いようには気をつけておこう。


 次はスキルか。

 これはあまり悩む必要が無いな。

 選択したスキルの即時三段階成長という効果はどのスキルを選んだとしても戦力アップは間違いなく、攻略を加速させる大きな助けになるのは疑いない。しかしながら、おれはのんびりいこうと決めている。スキルは普通にプレイしていれば熟練度が溜まって自然と育っていく。ゆっくりとではあっても確実に。なら、加速させるよりも成長の限界に達して止まった後に上積みとして使った方が良い。

 と言う訳でスキル強化符も保留だ。

 ただし、何に使ったらよいのか決められない消極的な保留ではなく、先を見据えた確かな考えに基づく積極的な保留である。


 そして最後にアビリティ強化符。

 これが効果を及ぼすアビリティの構成要素とは“攻撃力”、“スタミナ消費量”、“再使用までの待機時間”の三つになっている。

 どのアビリティの、どの要素にするか。

 どのアビリティかは、悩んだ末『強撃』に決めた。言わずと知れた最初に憶えたアビリティだ。武器スキルを育てていって憶えるもっと強力なアビリティに使うのも手ではあろう。最終奥義的なアビリティを強化して究極奥義的にするのだ。

 しかしながら全武器種共通で使えて、『次に行う攻撃の威力を上昇させる』という強撃は汎用性が高い。『三連打』の初撃に強撃効果が乗った事から判るように、強撃の強化は間接的に他全てのアビリティを強化する。究極奥義一点に絞るか、汎用性を取るか。俺は汎用性を取った。

 そしてどの要素かは、悩まずに“再使用までの待機時間”にした。

 汎用性を重視して強撃にする以上、優先順位は待機時間の短縮が一番高い。他のアビリティに効果を乗せていくなら強撃の待機時間は短ければ短い程良いに決まっている。それに攻撃力はアビリティレベルとともに上がっていくし、スタミナ消費量は『持久』のスタミナ消費軽減効果である程度カバーできる。強化符を使わなければ短縮できない待機時間の優先順位が高いのは当然だ。待機時間短縮で使用頻度が上がればアビリティレベルが上がりやすくなり攻撃力も上がる好循環も期待できるだろう。


 唯一使うことになったアビリティ強化符を実体化させ、ちょいちょいとウィンドウ操作して強撃の待機時間を選択した。実行と同時、強化符の紋様が光ったかと思うと符全体が発火して青白い炎に包まれた。

 びっくりした。

 強化符は一瞬で燃え尽き、しかし消えない炎がぐるぐると渦を巻き、不意に解き放たれたような勢いで俺の体に吸い込まれる。


 ぴろーん、とおなじみの通知音がなり、待機時間の項目に『+1』の表示が追加された。

 ……判るんだけど。

 一段階強化しましたとの意味で+1なのは判るんだけど、『待機時間+1』だと短縮するどころか伸びたようにしか見えないじゃないか。

 いや、判るんだけども。もうちょっとこう、どうにかならなかったのだろうか。

 それに強化してどれくらい短縮されたのかも具体的には判らない。実際に使ってみて体感で確かめて下さいってことなのか。まあ良い。今日の俺はかつてない程に気力が充実している。面倒な検証だってやってやるさ。

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