4-4:解禁
注目すべきは『着衣データ固定・非破壊』『モザイク表示』『倫理コード』『ハラスメントコード』『生理反応再現』『快感再現率』あたりになる。言うまでもなくエロに関するあれこれを規制する項目だ。
二か月半もムスコと面会できずにいるのも、そのムスコが織姫のエッチな緊縛姿に全く反応を示さないのも、有料コンテンツのラインナップがやけに健全だったのも、“外の街”の一部のお店に入店できなかったのも、全てはこれら保護項目が有効になっているからに他ならない。
逆に言おう。
これらの保護を外した時、エロが解禁されてここはエッチのできる仮想世界に変貌する。ま、俺には相手がいないから一人遊びしかできないけどな!
「なにがとは言わないが、それで色々できるようになるだろ?」
「ああ。これはマジで感謝しかない」
「実験参加者は成人ばかりだし、運営もその辺は配慮してるんだろう。最長二十年想定だもんな。禁欲を強いるには長過ぎる」
それもそうだ。
そもそもこれらは性的な迷惑行為からユーザーを守るための保護項目。成人同士が双方合意の上でそうした行為に及ぶのを邪魔する目的のものではない。嫌なら保護を有効にしておけば良く、エッチしたいなら保護を外す。それだけのことだ。
俺は、保護を外しておこう。
脱衣あり、モザイク無し。これでムスコと再会できる。
倫理、ハラスメントも外して……これで年齢制限のあるコンテンツも解放された。
生理反応、快感再現率……強制ED状態ともオサラバだ。
「城太郎って運営の関係者扱いなんだろ? なんで知らなかったんだ?」
「豊さんは俺の保護者、親みたいな人だ。エロ方面の話は逆にしにくかったんじゃないかな」
「そういうものか」
「俺の方から訊けば教えてくれたろうけどね」
息子に自慰の仕方を教える父親はいないだろう。
娘に教える母親もいないと思う。
少なくとも俺の常識と感性ではそうだ。
これで良し。
設定を変更して一区切り。
客観視は解除して、と。
「ん! ん! ん!」
「あ、城太郎が戻って来た」
「って、梓は何やってんの!?」
客観視で意識の外に追いやっていた織姫と梓。
再認識してみればとんでもないことになっていた。
まず、梓の前には追加注文したらしきソーセージセットの皿が鎮座している。その内の一本であろう極太ソーセージが梓の手にあり、その先端は織姫の唇を割って挿入されていた。しかも前後に動かして抜き差しを繰り返している。おいおい、あのストローク、どう見ても喉まで入ってるだろ……。
やってるのは先日始まりの街で織姫自らやっていたのと同じ事だが、緊縛されて身動きできないまま他者の手でやられていると全く違って見えてしまう。織姫は頬を上気させて苦しそうな声を微かに上げていて、しかし気のせいか恍惚と蕩けているような雰囲気も漂わせていて……これはとってもエロい。
「一口ずつ食べさせるのが面倒になった。織姫は肉棒が好きだから咥えさせとけば大人しくなる」
「珍しく長文で喋ったと思えばそれか!」
忘れてた!
清一郎の証言によれば梓は織姫の影響を強く受けている。ただの口数少ない不思議系ではなかったのだ。その割には影響元である織姫の扱いが雑な気もするが……。
がすがすじゅぽじゅぽと容赦なくソーセージを前後させる様はもう『肉棒を抽挿している』ようにしか見えず、何度でも言おう、とってもエロい。
あ……やばい……。
設定変更したばかりの『生理反応再現』がさっそく仕事をしている。そこらのAVなんかよりも数倍刺激的な光景に俺のムスコは久し振りに元気いっぱいだ。
「織姫、あっちの話終わったみたいだから食べて良し」
「ん」
梓の許可を受け、織姫はぶつりと肉棒を噛み切った。
「ひぃ!」
「にやり」
ソーセージとムスコを重ね見ていた俺はヒュンとするものを感じて思わず息を引いていた。そんな俺にしてやったりと笑みを見せる梓。見透かされているみたいでなんだか悔しい。
「梓、激しくて素敵だったわよ!」
「ん」
「それと……そのソーセージ、ちょっとこっちに……そうそうその辺」
織姫の誘導により、梓は織姫の胸の前、二つの膨らみの丁度中間にソーセージを縦にして構えた。それだけ。それ以上は何もしない。しかしソーセージをムスコと重ね見ている俺にはとある光景が幻視される。どこまで俺のムスコを元気づけるつもりだこの女は。
「飽きたわ! 城太郎ももう堪能し尽したでしょうしお縄はここまでにしましょうか!」
そして唐突に終了宣言し、緊縛を解くために再び梓とともにトイレに消えていく。
「……」
「姉ちゃんがごめん」
「清一郎が謝るようなことじゃない。それに……」
実際、織姫も言っていたとおり、俺は堪能し尽している。
とてもエッチな緊縛姿、右手に残る柔らかな胸の感触、ソーセージを使った強制口腔性交モドキ、パイズリ幻視、意外と悲鳴が可愛いギャップ萌え。これだけ揃えば俺の妄想燃料として申し分ない。エロ解禁一発目、今夜のネタに丁度良いと密かに思っていたのは事実。しかしながらそれを本人やその身内に公言するつもりなどさらさら無かった。
「それに、なんなんだ?」
「いや、なんでもないよ」
「そうか? まあいいや。ところで城太郎はもう森ステージの攻略は始めてるのか?」
織姫たちのせいで奇妙な空気になっているのを一掃するように、清一郎は語調を改めて問い掛けてきた。俺もそれに乗るとしよう。
「まだだよ。昨日は砦からちょっと外を覗いて帰って来ちゃったから。いやぁ自分でも驚きなんだが、気付いたらログインしてからこっち毎日攻略ばっかりやってたんだよな。丁度区切りも付いたし、ここらで一休みしようかと思ってさ。今日も昼間はマイルームでだらだらしてた」
「余裕なんだな」
「今から賞金レースに絡めるとは思えないからね」
大遅刻で一か月、フェンリル討伐で二か月半。この先もソロ攻略を続ければ遅れはどんどん大きくなっていくことだろう。賞金を目指すのは非現実的だ。バイト代だけもらえればいいやの精神で、俺は雄二さん達が作ったこの世界と『エクスプローラーズ』をのんびりと楽しむことにした。
これからは定期的に休日も設けるつもりである。
「森での戦闘は未経験か……だとすると、これから驚くことになると思うよ」
「なんだよ思わせぶりだな」
「森ステージにはゴブリンが出るんだがな?」
「まあこの手のゲームには定番の雑魚モンスだな」
「実はうちの母ちゃんがゴブリンの監修をやっててさ。他のゲームとは一味違うゴブリンになってるんだ。ネタバレになるからどう違うのかは言わないでおくけど、きっと驚くよ」
「へえ、そりゃ楽しみだな」
ゴブリンは雑魚モンスの代表格だ。ゲームによってはDQ型スライムの代わりに最初に戦うモンスターになっていることすらある。それだけに長続きせずに広く浅くゲームをやって来た俺もゴブリンとの戦闘経験は豊富にある。
ゴブリンの外見的なデザインはもう固まっていて、どのゲームでも共通している。人間の子供くらいの背丈で、身長に比べて足が短く腕が長い。短足故に鈍足、しかし油断すると意外と長いリーチに騙されて手痛い一撃を喰らうことになる。が、それを承知で相対すれば比較的簡単に倒せる文字通りの雑魚モンス。それがゲーム製作とは全く畑の違う剣術家が監修するとどう変わるのか、実に楽しみである。




