オカマだけど演劇本番なので頑張りたいと思います!
「それでは一年三組の美女と野獣開演です!」
「始まるわよ」
白鳥は緊張した表情で言う。
「分かってるわよ」
「それにしても作戦は成功ね、人が多すぎて立ってみてる人までいるわ」
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三十分前、教室
「じゃあ、みんなやるよ!」
「「「「おおう!」」」
クラス全員で宣伝作戦の開始の合図とともにクラスから全員が宣伝のため外に飛び出した。
一人、五人は最低でもチラシを渡すノルマを設け客引きをしたのだ。
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これにより、今の満席という状態が広がっているなら成功したといってもいいだろう。そして現在も一部の裏方には体育館の前で客引きを続行してもらっている。あとは演技が客の心に響くかどうかで勝負が決まる。
アナウンス「昔々、遠い国のお城に王子様が住んでいました。王子さまは何でもできたため優しさを失っていました」
(フードをかぶった老婆がやってくる)
「ある夜、お城に来た老婆が一晩だけ泊めさせてほしいといい、一本のバラを差し出しました。でも王子様はその姿を馬鹿にして追い出してしましました。すると老婆は一瞬で美しい魔女が現れたのです、王子様は慌てて謝りましたが聞き入れてもらえず、王子様のお城全体に魔法をかけてしまいました」
そして魔女役は陽香ちゃんにしたため、フードから顔を出した瞬間、男子勢から歓声が上がった。
(魔女が杖を振る仕草をする)
「そして魔女は言いました」
陽、魔女「このバラが枯れるまでにあなたが愛することを学び、愛されることができればもとにもどるでしょう。しかしバラの花が完全に散ってしまったらもう二度と元の姿に戻ることはできないでしょう」
泰、野獣「そ、そんな」
「そして年月が流れ野獣となった王子様は完全に希望を失ってしまいました。いったい誰がこんな野獣を愛してくれるのでしょう」
そして場面は白鳥が演じるベル、中村が演じるガストンの会話に移り泰三は舞台裏に退散した。
「どうだったかしら? セリフを間違えたところはないと思うんだけど……」
と泰三は自分の演技がうまくいっていたのか不安で高坂真緒に訪ねた。
「うんうん! 良かった! でもまだまだこれからだから気を抜かないでね!」
すると満足そうに感想を小声で言う高坂さんをみてやっと安心感がわいてきた。
「ふぅ、それなら良かったわ、次も頑張らないとね」
「……」
すると高坂さんがこちらを見つめ何かを言いたそうな表情をしている。
「ん? どうしたの?」
「え? いや、あの、どうして泰ちゃんって私のわがままな依頼をこんなにがんばってくれるのかなーって……」
まるで子犬のような瞳でこちらを見つめてくるため、流石にこらえきれなくなって目をそらした。
「べ、別に大した理由なんてないわよ……あそこに出ている人に半強制的に連れてこられたから、始めたのよ」
するとあからさまに落ち込んだ表情で下を向いてしまった。
「そっか……」
「で! でも、始めたのはそんな理由だけど今こんなに頑張ってるのは純粋に演劇って思っていたより面白いと思ったからよ?」
「ほんと!? 演劇楽しいと思ってくれたの!?」
「え、ええ、思っていたよりかは……」
「そっかぁ~、えへへ」
よく分からないが演劇っを好きになったのがよっぽどうれしかったのだろう、表情がニヤついてて少し怖いわ。
まあ、機嫌を損なって演劇に支障が出てしまうという最悪な事態は免れてよかったわ、これで思う存分劇に集中できるわ……て、え? 人がどんどん出て行ってるじゃない!
「こ、高坂さん! 人が!」
「えへへ、真緒でいいよ~……え!? ど、どうして!?」
「なんかここ暑くね?」 「あ、ああすげえ人が多くてまるでサウナだな」 「あたしたちもでよ~?」
折角集まったお客さんたちがみるみるうちに出て行ってしまっている。
「そ、そうか人が多すぎて暑くなって、劇どころじゃないのよ!」
「それじゃあ早く窓とか全部開けて、表で客引きしてる人たちと先生たちに扇風機を貸してもらえないか交渉にいってくる! 泰ちゃん出番までまだあるから少し任せていい?」
「え、ええ! 急いで行ってらっしゃい、ここは任せて」
「じゃあ、少しお願いね!」
窓を開け終わると高坂さんたちは先生に交渉しに行ってしまったため、泰三と裏方数人になってしまった。
「とはいったものの、裏方って何をするのかしら……」
泰三は裏方の仕事なんてやったことがなくさっぱり分からなかったのだ。
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