オカマだけど文化祭当日頑張りたいと思います!
文化祭当日、泰三達のクラスの演劇は午後からとなっていたため、泰三は一人で一通りの出し物を楽しみながら回っていた。
「そういえば、三年の一クラスは午前に演劇をやるんだったかしら」
体育館の前を通り過ぎた時に、看板がたっていた。
「……見ていくとしようかしら」
中に入ってみると席はすこしだけ空いているというだけでほとんど席は埋まっていた。
泰三は後ろの一番端の席が空いていたためそこに座った。
「この人たちの演劇は確か、ロミオとジュリエットだったかしら、文化祭って言ったらこれよね」
泰三はふと一週間前の会話について思い出した。
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「そういえばなんで美女と野獣? 文化祭っていったらロミオとジュリエットじゃない?」
「そういえばそれ私も気になってた、どうして? 先輩にとられたから?」
「え? いやあ、それもそうなんだけど……」
「「だけど?」」
「このクラスには美女はいるけど、イケメンはいないからロミオとジュリエットはきついかなぁ~って……」
「「…………」」
「確かにイケメンって言う人はいないわね……」
「そうね……」
「その点、美女と野獣ならぴったりな人がいた! って思ったから」
「「ああ~」」
そう言うと二人は納得したように本題に入ったのだ。
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そしてそんなことを考えているうちに演劇は終わりに近づいていた。
しかし、やはり、三年というだけあって、やはり演技はきっちり仕込まれている、だがなぜだろう、面白いのだけれど何か物足りない……確かにうまいのだけれどそれだけだ。
客をワッと驚かせるものはあまり感じない、拍手もそれなりだったが大歓声というものではなかった。
「演劇ってこんなものかしら、もっと心に入ってくるものだと思っていたのだけれど……」
そして、あまり面白いとは思わなかった演劇を見終えてクラスに戻った。
「あ、やっと戻ってきたわね! どこで何をしてたのよ、本番前に一回合わせるから早めに戻ってこいって言ったじゃない!」
戻ってきて早々、白鳥が少しいら立って出迎えてきた。
「そ、そうだったかしら? 三年の演劇を偵察していたら遅れたわ」
「そういうのは高坂さんの仕事なんだからあんたは演劇に集中してればいいのよ」
「高坂さんも見てたの? 三年生の演劇」
「あ、うん、先輩達のを見て何か参考にしようと思ったんだけど……、泰ちゃんは見ててどう思った?」
「あたし? 演劇のことなんてわからないけどいいの?」
「うん、いいよ、お客さんは演劇なんてほとんどしらないんだから」
「そうね、確かにうまかったのは確かよ、でも何か物足りなく感じたわ」
「やっぱりそう感じるよね……」
「やっぱり?」
「うん、三年生の人たちは多分演劇なんて嫌々やっている人が多いのかもしれない、だから熱がなくてお客さんの心に届かなかったんじゃないかと思って」
「なるほど、物足りなさの原因はそれだったのね、流石高坂さんね」
「それほどでもないよ、泰ちゃんの意見を踏まえての考察だから」
「高坂さんはいいひとね」
「!! そ、そんなんじゃないよ、ただ私は本当のことをいってるだけで……」
高坂さんは褒められることに耐性がないのか顔を赤くして否定した。
「ねぇ、そこのオカマ……、わざとこの私を無視しているのかしら? だとしたらいい度胸じゃない……」
「い、いえ別に無視しているわけじゃぁ」
「ならさっさとやるわよ!」
「わ、わかったわよ」
今日はまた随分と機嫌が悪いわね、何か悪いものでも食べたのかしら
そして最後のあわせが終わり、いよいよあと十五分前と本番まで近づいていた。
「な、なんか思っていたよりとてつもなく緊張するわね……」
「あら? あなたも? 実はあたしもさっきから緊張して心臓が口から飛び出そうよ」
「げ、劇の最中にセリフ度忘れとか本当にやめてよね、そんなことしたら高坂さんの面目丸つぶれよ」
『それではこれから一年三組による美女と野獣を開演したいとおもいます! どうぞお楽しみください!』
そして泰三達の演劇の幕は上がった。
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