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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第七章 帝国北部紀行
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ep075 鉱山都市ミナン

ep075 鉱山都市ミナン






僕はギンナを連れて西へ向かった。この先にはミナンの町と鉱山があるという。ミナンの町は鉱山都市として発展し西から海の産物、東から山の産物を持ち寄り商業の町としても栄えている。


そこへ僕はギンナのお弁当(鉱石)を求めて移動した。海産物を満載した商隊と伴に西へ向かう。牛に似た魔物に引かせた荷車に歩調を合わせて商隊は進む。僕は行商人として行動していた。


「のどかな風景ですねぇ」

「あぁ、冬籠りの準備で、家畜を集めておるのぉ」


僕は同行の商人に話しかけた。平原では家畜の群れを追っているが、その先に特徴的な三つの山並みが見える。


「あれは?」

「左手の山並みは飛竜山地だぁ」


すると右手がミナンの鉱山だろうか。鬼人の少女ギンナの主食は鉱石で健康のためには「鉱石、肉、鉱石、野菜」ぐらいの食事が理想的だ。普通の人里の食事では腹痛になる事がある。僕はギンナの様子を見るが…調子が悪そうだ。品質の良い鉱石が手に入ると良いケド…


僕は不安を抱えて歩を進めた。




◆◇◇◆◇




その頃、バオウとシシリアとアマリエの三人は幌馬車で南東へ向かった。目的地はアルノルドにある水の分神殿だ。迷宮で保護した冒険者はケルビン・ラドルコフと名乗った。…貴族のご子息らしい。


「GUU ケルビンの様子は?」

「よく眠っていらっしゃいます」


獣人の戦士バオウは御者台で水の神官アマリエに尋ねた。揺れる馬車でよく眠れる者だと思うが、あの衰弱ぶりでは止むを得ない。


「GUF 貴族ならば お貴族に預けた方が ヨカロウ」

「そうなのですが……事情がおありの様子で、水の分神殿に保護いたします」


幌馬車は車輪にマオヌウの表革を張り振動を軽減している。マキトが嬉々として改造するのを手伝ったばかりだ。今は荷台に藁を積み寝台として貴族のご子息のケルビンを乗せている。風の魔法使いシシリアが付き添っているはずた。


「GUU …」

「シシリアさんは乗り気ですよ」


バオウは不満な様子だが、シシリアは貴族のご子息らしいケルビンの頼みを聞いて乗り気の様子だ。無事にアルノルドの町へ護送して水の分神殿に身を隠せるなら報酬を払うという契約だ。…護衛依頼と見ても報酬額は悪くない。


一応にウエェイの冒険者ギルドで調査したところ、ラドルコフ伯爵家は存在する。本人は護衛も荷物も失って身分を明かす物は無いが、本人の証言に信憑性はある。事が単なる迷宮での遭難事故とは思えないので心配だが、水の神官アマリエはマキトが狙われた可能性も考慮していた。


ケルビン・ラドルコフは黒髪の若者でマキトと容姿が似ている。


幌馬車は被害者を抱えて走った。



◆◇◇◆◇



僕が同行した商隊は途中で野営したが、翌日にはミナンの町へたどり着いた。朝から小雪がちらつく寒さだに、ミナンの町は北側の鉱山に寄り添う様に城壁を巡らせて要塞の様だ。もっと南の森林地帯へ町を広げても良い思う。僕は行商人として町の門に入る。


「ふむ、トルメリアの行商人か。商品は何だ?」

貝玉(かいぎょく)にございます」


僕は門衛の兵士に商業ギルドの身分証と商品を見せた。商品は海底の宮城で受け取った土産の一部だ。


「ほほう、貝玉(かいぎょく)とは珍しい。宝石商は西の通りが良かろう」

「どーも、ご贔屓に」


通行利用として銀貨と兵士に心付けを渡す。ギンナは風除けのフードを被り荷物持ちの獣人として記録された。


僕らは西の通りを進んだ。


「少し両替しておこう」

「はいですぅ」


この辺りは宝石商や両替商と装飾品を作る工房が軒を連ねている。僕は手頃な両替商で貝玉を少し金銭に代えた。


「この辺りで鉱石を買える店はありますか?」

「そーさね、山の手の方かね」


両替商の婆さんが言うには鉱山に近い山の付近らしい。僕らは山の手に向かった。


山の手は鉱山都市らしく鉱山から掘り出した鉱石の選別場や鋼材の製錬場があった。金属を扱う工房も見える。


「ここで鉱石を買う事はできますか?」

「おう、選別前の鉱石ならぁ安くしとくぜ!」


鉱石場の親方と見える男はだみ声で応えた。


「では、遠慮なく…【粉砕】」

「これが、良いですぅ~」


僕は鉱石の山に登り石材を適当な大きさに砕く…ブラアルの選別場で鍛えた技だ。


「石割りの技を見よ…【粉砕】【粉砕】【粉砕】」

「はむっ、はむっ、はうぅ~」


岩が砕ける懐かしい匂いだ。ギンナは自分で好みの鉱石を集めている。当面のギンナのお弁当(鉱石)として麻袋にいっぱいの鉱石を手に入れた。


「お嬢ちゃん。良い目利きだぁ」

「ふうう~」


おや、鉱石場の親方はギンナが集めた鉱石をひとめ見て品質を見抜いたらしい。


ようやく僕は目的を果たした。雪は本降りとなりそうだ。




◆◇◇◆◇




アルノルドの水の分神殿は古くからあり歴史を感じる佇まいだ。水の神官アマリエが神官長に面会するとバオウたちは訪問客として宿舎へ落ち着いた。昨日から降り始めた雪は夜のうちに積雪となってアルノルドの街路を覆っている。風の魔法使いシシリアは獣人の戦士バオウを伴って町へ出かけた。


貴族のご子息ケルビン・ラドルコフの伝手へと連絡を取り護衛依頼の報酬を受け取る為だ。慎重に襲撃を警戒してケルビンを水の分神殿に匿い、詐欺の可能性も考慮してバオウとシシリアは指定の屋敷に向かった。


繋ぎの連絡に手紙を渡すとケルビンの話にあった家令と見える男が現れた。


「ケルビン様はご無事ですか!? すぐに、案内して下さい」

「こちらへ」


主を心配した様子の家令は安堵と不安な面持ちで二人に案内された。ケルビン本人が無事であれば、直ぐに屋敷へ顔を見せるハズである。冒険者と見える男女に案内されて水の分神殿に着いた事にひと安心する。ここならば、貴族の権力闘争に関しても中立と思えた。


「おぉ、ケルビン様!」

「すまない…心配をかけた…」


ケルビンが伏す寝台に駆け寄って家令の男が跪く。感動の対面を見守るばかりだ。


語られる話ではウエェイの迷宮へ入ったケルビンの一行は順調に迷宮探索していたが、途中で罠に嵌り遭難したという。ケルビン本人は僅かな食糧と水だけで飢えを凌ぎ生きながらえたが、伴の者たちを失い自責の念に後悔している。


まぁ、護衛依頼の報酬が貰えるなら、お貴族様の事情はどうでも良いのだ。




◆◇◇◆◇




僕は宿屋を出て新雪を踏みしめた。今朝は雪も止んで冷たい朝だ。前日に目星をつけた魔道具店に入る。そこは羊皮紙を使った魔法の道具を扱う店だ。


「聖魔法を使う魔道具はあるかい?」

「これが、聖魔法の巻物だよ」


魔道具店の小僧と見える店員と話す。


「へぇ」

「魔力を注いで放り投げると聖炎の魔法を発動する!…金貨2枚でどうかな?」


「高いなぁ……」

「お客さん!ウチの店では高品質!で高性能!な巻物ですよ~」


「うむ。品質を確かめたい。職人を紹介してくれないか」

「えっと、紹介だけなら」


僕は聖炎の巻物の代金に金貨二枚と職人の紹介料として銀貨二枚を支払った。


「まいどあり!お客さん、付いて来て」


魔道具店の小僧に付いて工房を訪れた。そこは羊皮紙の他に薬品を扱うらしく独特の匂いが立ち込める工房だった。


「ズーラン親方ぁ! お客さんが巻物の品質を見せて欲しいと……」

「ほう」


工房主と見える男は顔色と目付きの悪い男だった。緑色の顔をして胡散くさそうな目で僕を睨む。魔道具店の小僧が銀貨を握らせると仕方なく工房を案内した。


「作り方は秘密だが、俺の工房では職人がひとつずつ丁寧に巻物を作っている」

「!…」


職人が羊皮紙を加工したと見える文様に薬液でさらに図形を書き足している。


「羊皮紙も最高級の品質だッ!」

「では、羊皮紙の他にも加工していますか?」


好奇心で尋ねてみたが、


「あん、秘密だッ」

「……わかりました。すばらしい工房ですね!」


僕は工房と職人の技術をひと通り称賛してからお礼を述べて工房を後にした。



◆◇◇◆◇



貴族のご子息ケルビン・ラドルコフが呼びつけた家令の男から護衛依頼の報酬を受け取って懐は温かい。すぐに西の鉱山都市ミナンへ出立してマキトと合流したい所だが、水の神官アマリエが意外な話を切り出した。


「マキトさんが狙われた可能性があります」

「えっ?、皇帝陛下の騎士になって……おめでたいハズでしょ」


「帝都で騎士爵に叙勲されたのは事実です。けれど、それを好ましく思わない貴族もいます」

「そんな…マキト君が命を狙われるなんて…」


シシリアは状況を整理していたが、先にバオウが納得した。


「GUF なるほど…」

「マキトさんが西へ向かった事は秘密にしていますので、この神殿に敵の目が向くと思います」


「GHA その敵を 偽の餌で釣り上げる というワケだなッ」

「ラドルコフ卿からも、引き続きの護衛依頼があります」


護衛依頼としての謝礼金が貰えるなら文句は無い。ここなら神殿の警備として僧兵も動員できるから危険は少ないだろう。


彼らは護衛として敵を待ち受けた。





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