挿話 P02 ピヨ子戦記2
挿話 P02 ピヨ子戦記2
神鳥のピヨ子はアホ毛をなびかせて、高速飛行をしていた。
◇ (あたしは港町トルメリアを飛び立ち、南西街道の先に見える峠を目指していた。高速形態ならば、数時間の飛行で目的地に到着するわ)
そこは南西街道の難所で、山賊が出没すると言う峠を越えれば、城塞都市キドにも近いのだけど…、ピヨ子は急停止して峠を見下ろす高木の枝に止まった。
神鳥の威光か、峠の付近を飛んでいた野鳥たちは驚いて西の空へ飛び去る。
◇ (真に目指すのは、数ヶ月前に発見した山賊の拠点よッ。あたしは山中を音も無く飛んで、家畜小屋を発見したわ)
ピヨ子が家畜小屋の上部…換気用の高い窓から侵入すると、鳥馬は鞍を装備されて、戦闘の準備か…武装と待機をしていた。
「ピョッ! ピィィイ(あなたたち! これはッ!?…)」
「クケェェ、クワック(我ラハ 出陣スル ノダッ)」
ピヨ子が詳しい事情を聴き出す間もなく…ぎりぎりと、家畜小屋の扉が開き…武装した盗賊たちが現われた。鳥馬たちは引き出されて、盗賊の男たちが騎乗してゆく。
「お前たち! 今日が決戦の日だッ!」
「「「 うおぉぉお~! 」」
山賊どもは雄叫びを上げると一斉に駆け出した。鳥馬は山中の獣道を抜けて軽快に走るッ。
ピヨ子が彼らを追うと粗末な小屋と集落が見えた。
「突撃ぃぃぃ!」
軽快に山の斜面を走るのは鳥馬たち。それに騎乗した山賊騎兵がハンマーの様な武器を振るうと、あっけなく粗末な小屋は粉砕された。しかし、小屋の中は無人であった。
「WO FWOOU~」
「っ!?」
獣人の遠吠えがする…すととッ! 森の茂みから矢が飛来したッ。
「ヤツら、森の中だッ! 突撃せよッ」
「「「 おう! 」」」
山賊騎兵たちは鳥馬の機動力を生かして、再度の突撃を慣行した。
◇ (神鳥のピヨ子は警告するッ)
「ピッ!ピッ!ピー! (警戒。あぶない。魔法だわッ)」
「クワッ クゥゥ!(回避)」
混乱した鳥馬たちに火炎が降り注いだ。被弾した山賊どもが火傷を負い落馬してゆく。
◇ (あたしは配下の烏に上空から指示を出した。四番、五番隊は魔術師を牽制してッ。六番から八番隊は弓使いを背後から襲うのよッ!…残りはあたしと突貫するわッ!)
-KAAッ!-
◇ (山賊どもに助力するのは、腹立たしいけれど…作戦の遂行には止むを得ないの…)
上空には100羽を超えるカラスの群れが集まっていた。
◇ (あたしは予め、キドの町に巣食う烏のうち「名のある者」を組織して、各々が十羽ほどの隊を作り隊長を任命していた。各隊は統制された動きで敵を牽制する手筈よッ)
「WO!、FOUッ!?」
「わっ、何が起きてやがる!?」
それぞれの陣営が驚く中で、混乱したかッ!木立から弓兵と見える獣人どもが落下した。彼らも獣人らしく、俊敏に体を捻り見事な着地を見せるが、武装の弓矢を取り落としている。
「GAA!」
「それっ、今だッ! 討ち、滅ぼせぇぇ!」
隙を見て号令を発する。山賊の指揮官は抜け目が無いッ。各地で思わぬ…乱戦が生じている様子だ。
獣人たちも刃物を構えて抵抗するが、山賊騎兵の槍に仕留められている。伏兵の魔法使いと弓兵たちが烏の奇襲に驚く隙に、山賊騎兵の突撃が成功したらしい。接近されては伏兵の威力も半減だろうか。
それでも、近接戦に武器を振るい腕力勝負をするのは…無駄な抵抗と思えた。
◇ (あたしは混乱に紛れて、騎上を失った鳥馬たちを避難場所へ誘導しつつ…本人の意志を尋ねた)
「ピョッ ピルロロィ(あなたたち これからどうするの?)」
「クケェェ、クックル(我ラハ 小屋へ戻ル)」
◇ (意外な答えに窮する……そう、人族と共に暮らすと言う選択なのね……嫌になったら、いつでも助けに行くわ!)
戦局は既に決した。神鳥のピヨ子と烏の群れは戦場から離脱するのみだ。
◇ (あたしは鳥馬たちの今後の運命に思いを馳せるのだけど…)
こうして、本来の目的である鳥馬救出作戦は失敗に終わった。
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