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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第三章 迷宮の探索者とお宝
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033 城郭都市への帰還

033 城郭都市への帰還





 僕は船の上にいる。屈強な男たちを乗せた船は海賊船…てな事もなく地元の漁船だった。


「昼間なのに、海精霊が出たかと思ったべさ」

「ハハッ…」


日焼けた漁師の男が白い歯を見せて言うのを、僕は冗談と思って笑う。リドナスとニビが海精霊に見えたとか。


「それにしても船が沈んで、よく助かったべな」

「ええ、泳ぎは得意なもので…」


実際には河トロルのリドナスが漁船に泳ぎ着いて乗り込み、


「くわ、魔物か!と驚いたもんだべ」

「すみません」


そのリドナスが救助を求め、すぐさま海に飛び込んで行く方を見ると島から煙が立ち登り、海岸には手を振る女子の姿が見えたそうだ。


「それにしても、良い泳ぎっぷりだべさ」

「ありがとう、ございます」


泳ぎを褒められたリドナスは漁師の男たちに人気の様子で漁の手伝いをしている。ニビは服を着て幻術を使い尻尾と耳を隠して、大人しく黙っていた。


海精霊の話を聞くと漁師の言い伝えでは船を沈める魔物のようだ。実際に海での漁は魔物との戦いらしく、屈強な男たちは海の狩猟者と言われる。


………


漁師の村に着いた。


村長の宅では、陸の狩猟者が海に出れば遭難するとか何とか説教されたが、若気の至りを理由にして許しを請う。助けてくれた漁師には、わずかな薬草と島で作った干物をお礼に差し出した。


「実際に薬草は助かるべさ」

「こちらこそ、助かりました」


話を聞くと海辺の村では薬草が不足しており、干物は自家生産で味は家により異なるそうだ。僕らはお礼もそこそこに城郭都市キドに向かった。


既に日は落ちて夜半であったが、運よく僕の顔を知る門番がいた。以前の盗賊に追われていた際も世話になったらしい。事情を話し探索者ギルドに連絡してもらう。今日は本当に運が良い。


探索者ギルドで僕らは生死不明の行方不明者との扱いだったが、連絡があったのか、騒ぎを聞きつけたか探索者の剣士のマーロイがあらわれた。


「マキト!よく無事で帰った」

「ただいま…かな」


僕はマーロイに抱きしめられてガクブルしていた。男に抱かれる趣味は無い。お疲れだろうと、ギルドの近くに宿を取った。僕らは無一文だからマーロイが保証人になった。


もちろん探索者ギルドの事情聴取もあり僕らは重要参考人だったが、留置所に泊まるよりはマシだろう。狐顔の幼女ニビはしばらく不在にした森が気懸りだと言うて、夜を押して魔物の森に帰った。


………


城塞都市キドの町に生息する名のある(カラス)たちがピヨ子を出迎えた。町の周囲を警戒する(カラス)の斥候が先触れに知らせたのだろう。


-KAA KAA!(神鳥(かんとり)様 お帰りなさいませ!)-


「ピヨッ」

◇ (うむ。舎弟ども町に変りは無いか…)


武力闘争でのし上がった神鳥(かんとり)のピヨ子が出迎えに頷く。今夜は帰還を祝して(カラス)どもの宴会だ。綺麗どころを呼び集めろ!



◆◇◇◆◇




翌朝に剣士マーロイ、獣人の戦士バオウ、風の魔術師シシリアと探索者ギルドの職員が宿を訪れた。まず、マーロイが口火を切る。先制と速攻が好きな男だ。


「すまなかった、マキト」

「GUF 生きて 会えれば 満足だ」

「マキト君に…リドナスも無事に戻ってよかったわ」


すぐにバオウとシシリアが援護する。意気の合った良いチームだ。


「ええ、地下水路の流れに落ちて運良く海に出まして…」

「…」


約半月ぶりなので、途中を掻い摘んで経緯を説明する。


「それは、大変だったわね…じゃ、ニビちゃんは気を悪くしたのかしら」


シシリアがこの場にいないニビの事を話題にした。


「いえ、ニビは元もと気まぐれですし、住処の森へ帰ったダケですよ」

「そう……」


僕が答えると何か思案してシシリアが言う。


「マキト君の取り分があるわ」


探索者ギルドの職員がテーブルに三つの皮袋を置いた。シシリアの話では、迷宮の奥で触手の魔物と遭遇した場所にお宝を見付けたそうだ。


お宝を掘り出した彼らは大蟹の群れが居なくなるのを待って脱出した。食糧の大半を失ったが、装備と無傷だった魔道具をいくつか回収できた事は幸運だった。


バオウが見慣れたカバンをテーブルに置いた。


「GHA この鞄の 薬草が 役に立った」

「感謝するぜ!」


僕は何よりも使い慣れた道具が手元に戻った事を喜んだ。しかも、僕とリドナスとニビの分まで報酬があるという話だが、僕はニビの取り分を辞退した。


「ニビの分は皆さんで分けて下さい」

「それは…」


マーロイは頑として受け取らなかったが、シシリアの取り成しで治まった。


「それでは、探索者ギルドとして承認します」


それまで議論に口出ししなかった職員が、それぞれの報酬額を記載した書面を差し出した。全員が署名して今回の顛末となる。リドナスとニビの分は僕が代理人として署名した。


税金を払い。ひとり頭の報酬額は金貨50枚を超えた。


「僕は商会に戻ろうと思います」

「そうか…」


マーロイは名残惜しい様子だったが、バオウとシシリアは別れを告げた。


「GUF トルメリアに 行ったら 立ち寄ろう」

「お元気で…」


僕は城郭都市キドを後にした。




◆◇◇◆◇




 僕は城郭都市キドを出て北に向かい魔物の森に突入した。残念ながら蒸気鍋は破損していたので、ブラアルの町へ行くつもりだ。魔物の森を進むと狼顔の獣人に出会った。


「GAW お前が クロメか?」

「はい」


狼顔の獣人は鼻を鳴らすと吐き捨てた。


「ハッ、牙を抜かれた者の 臭いがする」

「しばらく 町に いたので…」


僕は言い訳しつつ余り物の干物を差し出した。牙を抜かれた者とは町で生活する獣人の蔑称だ。


「GAW 分かって いるな」

「…」


狼顔の獣人は干物を味わいながら言う。


「西に グリフォンが いる 気をつけな」

「ありがとう」


◇ (なんですって! グリフォン!!……あたしは前世の悪夢を思い出した……あれは魔王城が崩壊した日…)


僕はグリフォンが気になりて狼顔の獣人と別れた。ニビの事を聞きそびれた。


魔物の森でひと晩を過ごして森を進むと川に出た。ユートリネ河の支流のひとつだろう。リドナスが辛抱たまらん様子だったので、川で休憩した。


川で魚を追うリドナスは楽しそうだ。久しぶりに川魚を焼く。町で仕入れた黒パンに挟むのも良いだろう。魔物の森の道中で採取した薬草を煎じているとリドナスが話しかけて来た。


「やはり、河が いちばん デス」

「生じゃなくて、焼き魚も美味しいよ」


リドナスが僕を見つめて囁く。


「主様、ここで 暮らし まショウ」

「…」


夏の日差しに川のせせらぎが心地よかった。


「僕らニンゲンは町や村の、人間の中でしか生きて行けないと思う…」

「…」

「今も、蒸気鍋が欲しくて堪らないんだ」


リドナスは不思議な顔をして僕の話を聞いていた。僕も自分が何を意図して話しているのか分からない。川の浅瀬を渡り向こう岸に着くとそこには水田が広がっていた。


よく見ると水田の稲は薙ぎ倒されて所々に畔が切れていた。長雨による水害だろうか。川沿いに東へ進みデハント村へ入った。今日は村の宿屋に泊るつもりだ。


宿屋で夕食を頼むと川魚の煮込みが供された。料理の味はいまいちだが、黒パンを浸けてスープを味わう…舌に不審を感じて手が止まる。黒パンだけを食べるマズイ。


どうやら質の悪い食材を使っている様子だ。この村には住みたくない!……僕は部屋に戻って不貞寝した。




◆◇◇◆◇




 次の日の朝、北へ向かう商人の一団がいたので挨拶しておく。遠地へ旅する場合は商隊を組み護衛には傭兵を頼むものだが、ブラアルの町はすぐ隣の様なものだ。文句は言われまい。


道中の商人と世間話をすると、春先にデハント村と川上のウリモロ村で水争いがあったそうだ。その際にデハント村の実力行使で河川の堰が壊されて、強引に水を奪ったらしい。


そのせいか、最近の河川の氾濫ではデハント村の水田に被害があった様子だ。なんとも因果応報というか、不毛な争いをしているものだ。領主も頭を痛めている事だろう。


争いといえば、北の国イルムドフでは政変があった様子で庸兵団が北へ出張っているそうだ。いろいろと物騒な話が多いが、商人にとり道中の安全は何にも代え難いとか。


街道は北の草原をぬけてブラル山を登る。


僕らはブラアルの鉱山町に着いた。


◇ (あたしは魔獣グリフォンの襲撃を警戒して飛行したが、心配は杞憂に終わった)




--


※無事に南の島の無人島(バカンス)から帰還しました。

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