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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十七章 帝都地下迷宮の討伐
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ep343 反乱軍の残党を討伐せよ

ep343 反乱軍の残党を討伐せよ





 キブラ男爵に率いられた反乱軍の多くは討ち取られて獄門に首を晒した。しかし、反乱軍の首魁たるキブラ男爵の首級は挙げられず、付近の山岳地帯へ逃亡したらしい。司令部と東方討伐軍は手勢を分けて反乱軍の残党を追撃するように命令を発した。


交易都市シドニアリスの市民も解放宣言の当初は東方討伐軍を歓呼して迎えたが、占領軍は統制も無い烏合の衆だと知れると市民感情も反発に変わる。次第に東方討伐軍の本性の醜悪さが晒されて行くのだ。


ある女は扇情的だと髪を剃られて暴行の末に貞操を冒された。ある商人は神に供物を捧げよと食糧を奪われ金品を奪われて家財も捨てて逃げ出した。ある男は神に祈らぬ不敬だと労役の末に獄死した。ある子供は神の教えに従事せよと洗脳されて市民の虐殺に加わった。


そんな暴力と宗教侵略の最中に奇妙な噂があった。


「今すぐに町を捨てて逃亡せよ。解放軍は侵略者に変わる」


との噂の出所は解放の女神様の予言だとか、反乱軍の欺瞞工作だとか諸説はあった。


その時、解放の女神様と呼ばれる巫女姫ルレイは山岳地帯で反乱軍の霍乱戦術に手を焼いていた。


客人(マキト)どの、頼むッ」

「任せてください!」


マキト・クロホメロス卿は巫女姫様の依頼を聞いて颯爽と気球を飛ばした。山岳地帯の手前には広大な森林地帯が広がり、人家も無くて蛮族と獣人や魔物が出没する土地だと言われている。


その森林地帯へ反乱軍の残党を追い詰めたのは良いが、この土地の理は反乱軍の方にあり、神出鬼没に現われては東方討伐軍を霍乱している。そんな戦況の不利を挽回するためマキトは上空から敵軍の偵察を行うのだ。


「エナさん。見えますか?」

「うーむ。こうも木々が茂っては……魔物の動きと区別も付かぬッ」


「あわわわっ!」


気球の天幕が何かに衝突したらしく大きく揺れた。上空に障害物もあるとは思えないのだが、野鳥の叫びとも獣の咆哮とも思える鳴き声が上がる。


-GuGee Gua! Gua!-


「まずい、飛翔族だッ!」

「っ!」


飛翔族は珍しい蛮族で両腕は翼と化した獣人だ。鋭い嘴と足の鉤爪を持つが道具も満足に使えずに魔物の様に扱われる。そんな飛翔族は山岳地帯でも滅多に目撃されない少数部族なのだ。


-Guooh Gua! Gua!-


「ぐっ…これまでか…」


気球の天幕が鉤爪に破られるもの時間の問題と思われる。執拗に加虐されて気球が破れた。ぷしゅぅうう。熱気が噴き出し、退避する飛翔族の姿が見えた。


-Guufu Gua! Gua!-


「…エナさん。掴まってぇ!」

「きゃっ!」


マキトは墜落する気球から装備を捨てて飛び出した。空中には捕まる物も無いが、手にした羽扇子で気流を起こす。伊達に墜落した経験は豊富なのだ、こんな所で死んで堪るかッ。


愚者の一念は一瞬の飛翔を得て、二人は木々の蜜集する森林地帯へ落下した。




◆◇◇◆◇




 反乱軍の残党を追撃していた東方討伐軍の司令部は騒然となった。只でさえ森林地帯に潜伏した反乱軍の霍乱戦術に手を焼いていると言うのに、緊急事態に全軍の帰還命令が届いたのだ。


聖都カルノから駆け付けた伝令によると、南部のザクレフ地方の豪族が裏切りアルノドフ帝国の軍勢を引き入れたらしい。それと同時にナダル河の西岸には大規模な軍勢が姿を見せた。交易都市シドニアリスの反乱は大規模な陽動作戦であったか。


緒戦の謀略で後れを取った聖都カルノの軍令部は急遽に東方討伐軍を呼び戻し、南部の軍勢に対する足止めに酷使する算段らしい。それでも交易都市シドニアリスを占領する為に軍勢の一部を残すと言うのだ。


「馬鹿なッ、司教どもは何を考えているのか!」

「ルレイ様っ!」


年長の従者が巫女姫ルレイの失言を咎める。それよりも客人(マキト)の捜索はどうするのか。


「…ぐぬぬ、本隊は転戦するともッ…捜索は続けよ」

「はっ!」


東方討伐軍の多くは南部への転戦を決めた。聖都カルノの軍令部の命令に表立って逆らう者はいない。




◆◇◇◆◇




 マキトは森林地帯の茂みの中で目覚めた。やけに柔らかい下草が墜落の衝撃に耐えてマキトを受け止めた様子だ。


むにゅ。肉の感触に思わず呻き声がする。


「…あうっ、痛っつつつ…」

「エナさん! 無事ですか?」


マキトの下には攻撃的な豹柄のエナ・ウンが倒れていた。意識を取り戻した彼女は悲痛な声でマキトへ宣告する。


「私はもうダメだ。足を傷めて歩けぬ…」

「そんなッ【調査】【探知】」


魔力を通して傷の程度を見ると、どうやら足から着地したらしく両足ともに骨折をしていた。


「ぐッうぅ…追手が迫っている…私を捨てて逃げよ!」

「はん、嫌な事だッ【切断】【接合】」


添え木を当てて応急処置をする。目立った外傷は無いが体は痣だらけの様子と見える。


「コラッ何をする!?」

「少し、我慢して下さいねッ【麻痺】【解熱】」


痛み止めに毒を少々取り出し、薬草から解熱剤を精製する。生木の枝で背負子を作り、怪我人を背負うもの瞬時の事だ。


マキトは身体強化に魔力を使いエナ・ウンを背負って歩き出した。





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