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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十七章 帝都地下迷宮の討伐
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ep339 地下迷宮の探索4

ep339 地下迷宮の探索4





 地下迷宮(ダンジョン)の深部での爆発音の原因はコルティン伯爵家の白磁騎士団が騒動の中心だった。先行偵察したゴーレム娘の話では焼け焦げた牛頭巨人(ミノタウロス)の死体を発見したと言う報告だ。


討伐隊と見える騎士団は鎧も装備も立派なお貴族様の配下と見える。その騎士団の紋章には見覚えがあり、直ぐにでも隊長としてヴァニス・コンティン伯爵子が現われた。


「やはり、クロホメロス男爵の配下であったかッ」

「これは、コルティン伯爵子殿の軍勢でしたか…」


ヴァニス・コンティン伯爵子は帝都の警吏長官として北区の官職にあった筈だが、どうして、こんな迷宮(ダンジョン)にいるのか。


「うむ。そちも迷宮(ダンジョン)の討伐であろうが、我方も引く訳にはいかぬッ」

「ま、待てッ。邪魔をする謂れは無いものと思うぞ」


何かと南区の警吏長官のマキト・クロホメロス男爵には競争意識の高い御仁であった。こちらを敵視するのは止めて頂きたい。


「ふむ。話の判る御仁で命拾いした物よ…」

「えっ?」


過去にヴァニス・コンティン伯爵子にはゴーレム娘たちの窮地を救って頂いた恩義もある。その事件の顛末ではヴァニスもゴーレム娘たちの戦闘力を高く評価していたのだ。騎士団の斥候ならば、ゴーレム娘の偵察行動にも気付くだろう。


それで、マキトがヴァニスに近況を尋ねると遠慮も無しに事情を明かした。先の帝都の疫病騒動では住民の暴動を鎮圧も出来ずに、北区の警吏長官の職を辞したと言うのは貴族の面子だろう。その後は領地に引き籠っていたらしいが、ヴァニスも貴族の子弟として帝都の迷宮討伐の任に立ち上がったとの話だ。つまり、他にも迷宮討伐へ動いている部隊があるとの意味か。


当然にそれもマキトの予想の内であったが、事態は急激に変化しているらしい。マキト・クロホメロス男爵はヴァニス・コンティン伯爵子へ共闘を申し込んだ。


「協力するのは、吝かではない」

「こちらこそ、宜しくお願いいますッ」


同盟は成った。後は結果を出すのみだ。マキト・クロホメロス男爵は再会の祝いに乾麺を振る舞った。それは、帝都の製麺工場で製造した新製品でもある。


「今なら、粉末スープも進呈しようぞッ!」

「ほぉ、粉末スープとなっ」


ヴァニスの配下の白磁騎士団は総勢二十名余りの討伐隊で、火魔法の使い手から水魔法や治療師に除霊師も編成に含まれている。それでも迷宮(ダンジョン)の補給には苦労をしている様子で、食事は保存食の乾パンに水を飲むばかりだ。手軽にお湯を注ぐ粉末スープは白磁騎士団の面々にも好評であった。


「クロホメロス男爵閣下の栄光に乾杯をッ!」

「「 おぅ! 」」


熱々のスープが戦闘に疲れた体へ沁み渡る。貴族の騎士団としては黒焦げの牛頭巨人(ミノタウロス)の肉を喰らうという発想も無いのだろう。乾麺をスープへ浸して食べる方法も、それなりに理解された様子だった。


こうして、双方の部隊は腹を満たし休息を得た。




◆◇◇◆◇




コンティン伯爵家とクロホメロス男爵家の連合部隊は順調な探索を続けた。それに対して地下迷宮(ダンジョン)(ぬし)牛頭巨人(ミノタウロス)の主力に加えて魚人と昆虫怪人をも援軍に差し向けた。迷宮(ダンジョン)の指揮系統はどういう原理か不明であるが、魔物の群れが連携して行く手を立ち塞ぐのは脅威である。


雑魚(ザコ)どもがっ#」


ゴーレム娘のフレインが持ち前の怪力で魚人の群れを押し返した。タタタンとゴーレム娘のフラウ委員長が石弓を三連射して、飛翔する昆虫怪人を撃ち落とす。


「フレイン! 前に出過ぎですッ#」

「いっけー#」


フラウ委員長が注意しても、フレインの戦い方は雑だ。ゴーレム娘の末っ子フローリアが自慢の槍を振るい雑魚を追い散らす。


白磁騎士団の伝令と見える老兵が駆けて来たが、意外と素早い動きを見せる。


「男爵様ッ、あちらが手薄の様ですぞ!」

「ふむ、リドナス! 頼むッ」


マキトが命じると河トロルの戦士リドナスが突出した。助力と援護に獣人の戦士バオウも前線へ出る様子だ。


「ん♪」

「GUU 任せろッ」


乱戦を切り抜けて魔物の群れの背後へ出た。あとは白磁騎士団と挟み撃ちにして殲滅するのみだった。


………


探索の途中でも、いくつか壊滅した討伐隊の惨状を発見した。


それでも迂回路を経由して部隊の損害を抑えつつ進軍する様子はヴァニス・コンティン伯爵子の強かさと見えた。


「クロホメロス卿、この先が怪しいと斥候の報告があった」

迷宮(ダンジョン)(ぬし)が近いと?」


「そう、我らも覚悟せねばなるまいッ」

「…」


連合部隊の二人の指揮官が立てた策は単純な突入作戦だ。但し様子を見ては撤退の準備も怠らない。今回は迷宮主(ダンジョン・マスター)の情報を得て、次回の討伐作戦に生かす方が堅実な判断と言える。


マキト・クロホメロス男爵は手勢を率いて突入の戦陣を引き受けた。地下迷宮(ダンジョン)(ぬし)を討伐するという栄誉を欲した訳ではない。連戦の影響で白磁騎士団の兵たちにも疲労の色が見えて、迷宮主(ダンジョン・マスター)との戦闘は損害も予想されるのだ。


「あたしたちも、出なくて良いのかしら?」

「援護だけで十分さッ」


風の魔法使いシシリアは突入作戦の配置に心配をするが、マキトは冒険者たちをも押し留めてゴーレム娘の三機を先頭に突入した。人的な損害は最小限に抑えたい。


「ご主人様(マスター)。門番の様です#」

「亡者の群れかッ」


突入した広間は石壁に囲まれて見通しは良い。その広間には音も立てずに朧げな軍勢が控えていた。奥の扉を守る門番たちを越えて、あの扉の先に迷宮(ダンジョン)(ぬし)が居るのだろう。


「マキト様。お待ちしておりましたわ」

「リリィ。契約が解けたのか?」


亡者の群れを率いるのは、死霊術師のリリィ・アントワネだ。今頃は屋敷の神聖結界に拘留されいている筈だったが、逃亡の理由は明白だった。


「ええ、魔王の所為で……」

「っ!」


その一言でマキトは大凡の事情を察した。帝都の郊外にあるマキト・クロホメロス男爵の屋敷は魔王の手先に襲撃を受けたのだろう。サリアニア奥様ならば、屋敷の防衛に反撃をしない事は無いだろうが、そんな推測も待たずに戦端は開かれた。亡者の群れと見える軍勢が前進を開始したのだ。


この様子では後方へ待機するコンティン伯爵子の部隊にも何らかの軍勢が差し向けられているだろう。





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